神道文化学部の授業紹介 神社ネットワーク論 I

2016年8月2日更新

7月初旬の7限、黒崎浩行教授「神社ネットワーク論 I」の教室を訪ねました。
「神社ネットワーク論 I」のテーマは、「神社が結ぶ社会のつながりとその背景をさぐる」。
少子高齢化・グローバル化が進む現代社会で、これからの神社や神職はどうあるべきなのか、共々に考えていく授業です。
今回は、グループ別のディスカッション。

授業に先立ち、受講生はあらかじめ自らの発言要旨を提出済。
各自の発言要旨は、配布のタブレットで確認することができます。

ディスカッション開始。討論を捌くのは司会担当者。
「自分の実家は田舎の小さな神社です。年々地域の子供も減って祭も寂しくなっています。神職は何をしたらいいのでしょうか」
「私が考える対策としては、基本的には祭りの形は変えずに、そこに若者を引き寄せる、補助的なイベントを開催することです。一人でも多くの若者が、地域に足を運び、祭りに参加して貰うために、工夫を凝らしたイベントを考えることが必要だと思います」

「私が聞きたいのは、「皆さんが考える神道・神社の復興案」です。具体的にどんなプランが考えられるでしょうか」
「私が考えているのは、あえて子供に焦点をあてる方法です。境内での鬼ごっこ、駒回し大会、凧揚げ大会…。子供が神社に関わるとその親御さんもおのずと神社に関わってくることになります。子供のうちから神社に接することで、大人になっても神社に親しみを覚えるのではないでしょうか」

「人を集めるためには、ネットの活用が不可欠になります。PRの仕方で、お祭りに参加していただける人が増える可能性があると思います」
「「神社の尊厳」を損なわないようなネット広報。どのような方法があるのでしょうか」

「有名神社には毎日多くの外国人が訪れていますが、それは観光としてであって、神社への理解はあまり深くないと感じます。そうした外国人に神道を理解してもらうためには、どのような活動が必要なのでしょうか」
「有名神社は、参拝客が多い代わりにある意味で信仰心が薄い。地域で支えている神社は、参拝客が少ない代わりに信仰心が厚いのではないでしょうか。無論これが全てに当てはまる訳ではありませんが、神社界が抱えている問題を端的に示していると思います」

「首都圏での奉職を希望する学生が多いと聞きます。どういったところに魅力を感じているのでしょうか」
「私は、深い森に抱かれているような神社に魅力を感じます。首都圏での神社奉職は、いずれ地方の神社を継がなければならない人にとっては、あまりメリットがないように思いますが、いかがでしょうか」

「皆さんに神職を目指す理由を聞きたいと思います。「社家だから」という理由ではなく、もっと積極的で前向きな動機を聞かせてください」
「私が20代の頃は、自分の目標を目指して、世界を渡り歩いていました。今、神職を目指す若い人たちは、その分野で自分を高めるために、どういう憧れや夢をもっているのでしょうか。ぜひお聞きしたいと思います」

「地方では、神職一本でやっていける神社は少ないと思います。私も兼業しながら神社を守っていきたいと思います」
「神職は神に携わる仕事なので専業であるべきだと小さいころから教えられてきました。ほかの方たちは、どのような意見を持っているのか、お聞かせください」

「古来各神社によって祭式作々が異なっていたものが、明治祭式で統一されました。もっと地域の特性を出した祭祀にすべきだ、という考え方があります。皆さんはどう思いますか?」
「全国の神社では、祭りの原型そのもののような、古式の神事が伝えられています。宮中や神宮の洗練された神事の学習だけでなく、こうした特殊神事をアピールすることが、地域における神社の存在意義を高めることに繋がるのではないでしょうか」

最後に各グループの代表者が報告。
「晩婚化・少子高齢化等で、日本の総人口が減少しています。また住民が地元を離れてしまったため、多くの神社が存続困難となる事態が見られます。それだからこそ、神社と人々との関係を再認識し、改めて結び直す必要があるのではないでしょうか。本日の討論では、そのための様々なアイディアが話し合われました。中断された由緒がある祭りの再興、氏子の生活支援のための保育園の設置、子供・若者を中心とする教化活動(田んぼ学校、神様をテーマとするマンガ・アニメ)等々。地域の神社がどのような教化活動を行い、どのようなネットワークを構築し、どのように人々との関係を結び直していけばいいのか、これからも皆さんと一緒に考えていきたいと思います」

受講者から

私もいずれは地元に帰って、家族と共に神社を支えていかなければなりません。この授業では、そのためのアイディアや戦略を、衆知を集めて練り上げていきます。「自分のお宮だけではない、全国の神社が力を併せて困難な時代を乗り越えなければならないのだ」。そんな思いに勇気付けられながら、毎回の授業に臨んでいます。

神道を学ぶ者同士が、心ゆくまで語り合った90分。
「語り合うたを夢にすな」
国大音頭の一節が胸に響きます。

このページに対するお問い合せ先: 神道文化学部

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