國學院設立趣意書

2008年9月3日更新

人ノ世ニ在ルヤ、各其本国ニ繋属ス、故ニ故国ヲ愛重シ、
其君ニ忠実ナルハ人ノ徳義ニ於テ当然至要ナル者トス、
近時各国人ヲ教フル法、必先其国史・国文・国法ヲ授ケ、
次ニ百科ノ学ニ従事セシムルヲ常トス、是蓋人ヲシテ先其国、
其君ニ於ケル、忠愛ノ良心ヲ萌生シ、靄然トシテ赤子ノ
慈母ヲ慕フカ如ク、親和密合シテ離ルベカラズ感想アラシメ、
然ル後始メテ立身治生ノ道、開物成務ノ業ニ進マシメントスルニアリ、
故ニ其効果ハ以テ民タルトキハ善良ノ民タルベク、
以テ兵タルトキハ義勇ノ兵タルベク、以テ官吏タルトキハ
公平正直ノ官吏タルベク、多士済々トシテ挙ゲテ
皆君ニ忠ニ国ヲ愛スル精神ヲ興起セザルハ無キナリ、
各国其国体ヲ異ニシ、君其姓ヲ更ヘ、民其統領ヲ立ツル国ニシテ
昔臣民ヲ教フル方法猶此ノ如シ、顧ミルニ本邦ハ
万世一君覆帳ノ下ニ無二ノ臣民アリ、親和密合シテ
離ルベカラザル情義ヲ存スルハ、建国以来終始一貫火ヲ観ルガ如シ、
然ルニ輓近内外本末ノ弁、大ニ其宜ヲ得ズ、其弊延イテ教育ニ及ビ、
公私学校ノ設甚多シト雖モ、国学ヲ先ニスル方法未行ハレサルハ、
余輩ノ痛歎ニ堪ヘザル所ナリ、余輩ハ、夙ニ本邦固有ノ学術ヲ研究シ、
皇室ノ尊厳ナル所以、国体ノ鞏固ナル所以ヲ講明シ、
人情ノ基ク所、風俗ノ由ル所ヲ尋繹シ、国民ヲシテ益国家ニ忠愛ナル
徳義ヲ深厚ナラシメンコトヲ希ヒ、前ニ生徒ヲ養ヒ、
講筵ヲ開キ本邦ノ典故文献ヲ講究スル方法ヲ設ケシモ、
規模猶未大ナラザル憾アリ、今ヤ機運ノ漸熟スルヲ以テ、
生徒教養ノ法ヲ改正拡張シ、茲ニ國學院ヲ設立シテ専国史・国文・国法ヲ攷究シ、
我カ国民ノ国家観念ヲ湧出スル源泉トナシ、皇祖皇宗ノ謨訓ニ基キ、
固有ノ倫理綱常ヲ闡明シ、且、支那・泰西ノ道義説ヲ採択シ、
以テ之ヲ補充シ、以テ国民ノ方向ヲ一ニシ、
古今一貫君民離ルベカラザル情義ヲ維持セントス、
固ヨリ此ヲ以テ宗教、若クハ政党ノ器用トナスニ非ザルナシ、
若夫レ進ミテ人文ノ発達ヲ追ヒ、世務ノ必要ニ応ズルニ至リテハ、
海外百科ノ学モ亦網羅兼修シテ此学ノ進歩拡張ヲ計ル可シ、
之ヲ要スルニ、本院設立ノ趣意ハ、我カ国民ノ国民タル忠愛ノ精神ヲ発揮シ、
知育ヲシテ国体ニ基ケル徳育ト共ニ併進セシメンコトヲ期スルニ在リ、

明治二十三年七月

山田顕義

このページに対するお問い合せ先: 総合企画部広報課

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