第1回卒業式祝辞

2008年9月3日更新

余は国文を脩め国史を学ふは国民たるものの普通教育における
最大要件にして国学といへる文字は一つの専門科を意味するものにあらずと信す。
抑々國學院は国史国文を専修し傍ら百科の学を講究するを目的とし興れりと聞く。
諸子は今三年の修業を終へ
第一回卒業生なる名誉を負ひて世ニ出ると共に又責任の更に
大なるものあるを知れりや、思うに国学は一科の学として
止むへきものにはあらず。諸子は国学の田圃を耕しその美果を収め又、
全国忠愛なる国民の為に良友ともなり厳師ともなり、一隅に倚らずして
博く此の良種を蒔くの針路を取らさるべからす諸子のこの学における
其の責任重からむや。茲に卒業式に臨みて聊か一言を述ぶ

明治二十六年七月七日
井上毅

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