2015年4月1日更新
平成21年度の文部科学省「組織的な大学院教育改革推進プログラム」に採択され、平成23年度で終了しました國學院大學大学院「高度博物館学教育プログラム」(平成21〈2009〉年10月~平成24〈2012〉年3月)の活動内容をご紹介しています。
平成21年度の文部科学省「組織的な大学院教育改革推進プログラム」に本学大学院文学研究科史学専攻の「高度博物館学教育プログラム-体系的な知識と技能を備えた博物館学研究者と上級学芸員の養成-」(代表者」青木豊文学部教授)が採択されました。
本プログラムは博物館学に関する大学教育に携わることができる研究教育者ならびに高度な博物館学の知識・技能を有する上級学芸員の養成を目的とする。現在、我が国の博物館は国民の多様なニーズのもとで、その機能の抜本的変転が急務となっている。文部科学省は平成21年2月『学芸員養成の充実方策について』で、「将来的には大学院における教育の充実を図ることや、上級資格をはじめとする高度な人材の認定も視野に入れた検討も必要である。」と明言しているように、大学における博物館学教育の体系化によって個別分野での専門家ではなく専門知識を有した上で学術成果を活用できる知識と技術を有する人材の、高度な教育プログラムが必要とされている。本プログラムはその要請に応えるものである。
本学は建学の精神であり我が国の基層文化でもある神道に基づいた教育・研究を実践することにより、文学、歴史学、民俗学、神道学等の人文科学分野において300名を超える博士を輩出し、数多くの大学教員、神職、教員等を送り出し、我が国の教育・文化に大きな貢献を果たしてきた。一方、博物館学教育・研究においては、昭和33年開設の学部の博物館学課程では6,500名以上が学芸員資格を取得し、博物館学芸員の数は全国でもトップレベルにある。平成9年度より、全国に先駆けて文学研究科史学専攻考古学コースの中に博物館学科目群を設置し、これに関する課程博士(歴史学)を出している。さらに全国大学博物館学講座協議会委員長大学としても博物館学を牽引している。本プログラムはこれら本学の実績を最大限に生かし、将来にわたってそれを強固にすることを可能とする高度教育を目指す。
本プログラムの特質は、平成21年度後期より文学研究科史学専攻内に新設される博物館学コースを中核に、文学研究科各専攻が培ってきた高度で専門的な人文科学の教育・研究を組み合わせることによって、専門性・学際性を兼備した博物館学研究者・学芸員を養成することにある。具体的教育方法としては、従来の博物館学専門科目群を拡充・体系化し、基礎・応用・展開に段階付け、考古学・歴史学・民俗学・神道学・宗教学・美学・美術史等の専門選択科目を履修させ、幅広い基礎知識を涵養する。また、必要不可欠な実践的技能の習得についても、國學院大學研究開発推進機構学術資料館などにおいて、通年の恒常的なインターンシップを同機構専任教員の指導のもとにRA・TAが参画して実施することにより、収集から整理・保存・展示に至る技能の習熟に努める。加えて、本プログラムを円滑に実施するため、博物館学研究の情報拠点的役割を果たす博物館学教育研究情報センターを研究開発推進機構内に新設し、同センターを中心にして海外博物館との共同調査・インターンシップ(中国西安于右任故居紀念館・韓国釜山市立博物館等)、本学と関わりの深い神社博物館における研究・実習、学校と連携し小学校などに付設された、博物館(資料室)で地域文化資源の「保存と活用・展示」を実践する専門・特殊実習授業等を展開する。その他、学社(博物館関連企業)連携、博学連携(東京国立博物館でのインターンシップ)、他大学大学院との連携を行い、それぞれの場への参加により学芸員としてのコーディネート能力及び実務経験を高める。これらの体系的かつ組織的なプログラムを実施することにより、修士・博士学位授与の質・量の拡充を図るとともに、本学独自の資格として、修士には「國學院ミュージアム・アドミニストレーター」、後期課程の単位取得者には「國學院ミュージアム・キュレーター」をそれぞれ授与する。
本プログラムは、将来必要とされる上級学芸員を養成する大学院での教育のモデルケースとなることをも視野に入れており、実現されれば我が国の博物館学教育・学芸員養成に大きく資することとなろう。また、「國學院ミュージアム・アドミニストレーター」及び「國學院ミュージアム・キュレーター」資格取得者は博物館学の研究者のみならず、地域博物館、神社博物館や文書館、美術館などの上級学芸員として活躍することも期待でき、それによって研究科および各専攻の人材養成の目的をより一層実現することが可能となる。
社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材を育成する大学院博士課程、修士課程を対象として、優れた組織的・体系的な教育取組に対して重点的な支援を行うことにより、大学院教育の実質化及びこれを通じた国際的教育環境の醸成を推進することを目的としたプログラム。
平成19~20年度に実施した「大学院教育改革支援プログラム」を見直し、平成21年度からスタートしたもので、採択された取組を広く社会に情報提供することで、今後の大学院教育の改善に活用しようとしています。(日本学術振興会のページより参照)
平成21年10月よりカリキュラム稼動の博物館学コース、平成22年4月新設の美学・美術史コースについて、それぞれのコース内容についてご紹介します。
「博物館学」とは、「博物館とはなにか。良き博物館とはどうあるべきか。」を考える学問です。國學院大學大学院では、この「博物館学」は長らく文学研究科史学専攻考古学コースの中で学習・研究できる体制をとって来ました。毎年本学から多数の学芸員の有資格者が生まれていますが、文部科学省は学芸員の質のさらなる向上を求め、平成21年2月、『学芸員養成の充実方策について』を刊行し、博物館学課程のカリキュラム改正通達がなされました。このような学芸員を取り巻く環境変化・時代の要請に対応するため、國學院大學大学院では、史学専攻内において「博物館学コース」を独立させ、専門性の高いカリキュラムによる高度な学芸員の養成・輩出を目指すこととなりました。
カリキュラムは、博物館学を修めるにあたり基礎・応用・展開と拡充・体系化された講義群を置く他、収集・整理・保存・展示等の実践的な技術を習熟するために、学内資料館での恒常的なインターンシップ、地方小学校・神社における学外実習、アジアを中心とした海外博物館でのインターンシップなど、豊富な実習メニューを組んでおります。
カリキュラム修了後には、上級学芸員の証として本学独自資格の、修士には「國學院ミュージアム・アドミニストレーター」、後期課程の単位取得者には「國學院ミュージアム・キュレーター」をそれぞれ授与します。
また、本コースは今年度の文部科学省「組織的な大学院教育改革推進プログラム」に採択されました(申請プログラム名は「高度博物館学教育プログラム-体系的な知識と技能を備えた博物館学研究者と上級学芸員の養成-」です)。将来必要とされる上級学芸員を養成する大学院教育のモデルケースを目指します。
美学・美術史コースとは、「美学」を核として、広く「美術史」一般を視野に収めるためのコースのことです。さて、そもそも「美学」とはどんな学問なのでしょうか?
人間は芸術や自然などが持つ美に触れた際、感動し、時に涙することさえあります。「美学」は、そのような美的体験を踏まえ、人間の主観的な感受性を言語化・理論化しようと、18世紀のヨーロッパで生まれた哲学的分野の一つです。《Aesthetica(エステティカ)》というラテン語名は、『感性学』とでも訳されるべきですが、明治期の日本で『美学』という訳語がつくられ、中国でも韓国でもこれが用いられています。「芸術学」と同義で使われる場合もありますが、芸術学はすでにある作品、形について考察するのに対し、美学は「美」という価値的問題を自律的に取り扱い、考察する学問といえます。
一方、「美術史」とは19世紀に現れた、意外にも比較的新しい学問です。美術史が確立するまでは、古代・中世・ルネッサンスといった程度の時代認識しかありませんでした。「古代(=ギリシャ文化)には素晴らしいものがあった」という観点から、ギリシャをローマが模倣し、ロマネスクへと移り、キリスト教の影響を受けゴシック様式が生まれ、そしてルネッサンス(=古代文化の再生・復活)を迎えた、という「解釈」が生まれ、時代として区分されました。つまり、美術史とはイデオロギーがあって成立しているものといえます。昨今、美術史研究といえば、芸術家一人を取り上げ、伝記や人生論に終始してしまう傾向がありますが、本来的には世界文明史的問題の中に美術史を位置づけて研究していく必要があります。
本コースは理論的研究としての「美学」と、史的・実証的研究としての「美術史」とを有機的・統合的な関係のもとに視野に収めようするものであり、知的向上心を存分に刺激する研究環境を提供します。
また、本コースでは高度専門職業人養成の観点から『芸術情報論』という科目を設置し、現に活躍しているアーティスト、画廊や美術館で働いている人など、社会的実践に携わっている方を講師としてお招きします。現場の知識に触れることで、美術・芸術業界への志向性をサポートしていきます。
このページに対するお問い合せ先: 大学院事務課
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