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正しい理解が新型コロナ拡大を防ぐ

「文系学生」が研究最前線を探る《下》

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2021年2月19日更新

 年末年始に人の移動や飲食を伴う接触が増え、新型コロナウイルス感染症(COVID―19)はこれまでにない広がりを見せています。研究最前線の学校法人北里研究所(小林弘祐理事長、東京都港区白金)で「COVID―19対策北里プロジェクト」を指揮する花木秀明・大村智記念研究所教授・感染制御研究センター長(医学博士)が國學院大学文学部の阿部咲月さん(日文3)に伝えたのは、「感染は日ごろの注意である程度防げるが、ウイルスや感染症を正しく理解し、場面に応じた行動をとることも必要」ということでした。

「しつこいウイルス」次に備えて

阿部さん 新型コロナの感染拡大で世界中の人が感染症に対する意識を高めたと思うので、別の病気が流行しても生かせるのでは? プロジェクトではどんなことが分かってきたのでしょう。

花木氏 新型コロナは、強い感染力と重症化しやすい点に加え、「このウイルスはしつこい」ということが分かってきました。治ったようでも少しだけウイルスが残って症状が長く現れますし、完全にウイルスがなくなっても後遺症が残るのです。後遺症は若い人に多く、「起き上がれないほどの倦怠(けんたい)感」など深刻なものもあります。表面に出ない後遺症に苦しむ患者さんは、「怠けている」といった偏見にも苦しみます。皆さんには感染症の見えない部分も含めて正しく理解してもらう必要があります。新型コロナの問題は「症状がおさまっておしまい」というわけではないのです。

 この種のウイルスは簡単に変異を繰り返します。撲滅は無理でしょうから、長期的にウイルスとの共存を考えねばなりません。新型コロナの現在の致死率は約2%です。これを季節性インフルエンザ並みの0・05%程度に抑え込めば、感染拡大をコントロールすることも容易になるはずです。それには感染予防のワクチンやウイルスを除去する抗ウイルス薬に加え、重症化を抑える薬が必要です。

 私たちのプロジェクトでは、大村智・北里大学特別栄誉教授の研究で開発された駆虫薬イベルメクチンがウイルス増殖を抑える効果を持つことに注目し、日本での使用承認に向けての医師主導治験をスタートさせました。この薬は、全世界で年間4億人に投与されていて副作用の懸念もありません。重症化を抑えることで医療崩壊が防げると期待しています。

 プロジェクトの資金となる寄付の募集は期限がありますが、研究自体に終わりはありません。5年後、10年後に新たなウイルスが襲ってくるのを見越し、イベルメクチンを応用した新薬の開発も進めるつもりです。

「医療従事者を差別しないで」 正しい理解と行動を

阿部さん 私の身の回りでは、地方から都市部に通勤する親族がいますが、同居する親族が近隣住民からウイルス感染に関する不快な言動を受けたと聞いたことがあります。正しく理解すれば負の連鎖は断ち切れるはずです。予防も含めて今、私たちが気をつけることは?

花木氏 予防は「マスク、手洗い、距離をとる」が基本で、服についたウイルスも一般的な洗剤で洗えば死んでしまうことも知ってほしいですね。感染の第3波が深刻になる前には、若者がマスクをせずに大声で会話するといった姿も見受けました。そんなことをしたらせきをするのと同じくらい飛沫(ひまつ)を拡散させてしまいます。会話をしている人の中に感染者がいればクラスター(集団感染)が発生する危険性もあるのです。無症状でも感染させてしまうことを自覚するべきです。

 人・人感染の新型コロナを抑え込むには人との接触を抑えるロックダウンが一番ですが、人との接触を断ってしまうと経済活動が低迷したり精神面でのデメリットが出て自殺者が増えたりする恐れもあります。感染での死者も自殺者も、命は同じですからどちらも救わなければなりません。感染症を抑え込む対策はバランスを考える必要がありますね。 

 どうしても他人と接する必要がある場合は、場面に応じたさまざまな工夫をしてはどうでしょう。部屋の換気をしたり、高齢者と対面するときは若者が風下に回ったりといった工夫です。

 お願いしたいのは「医療従事者を差別しないで」ということです。感染者と接することがつらくて辞めるのではなく、家族が差別を受けるのがつらいので離職するというケースが多いのは問題です。医療従事者の心が折れてしまったら誰も救うことができなくなってしまうのです。新型コロナについて正しく理解し、正しく恐れることが大切なのです。

阿部さん 理系が専門ではない私も理解が深まりました。若い世代には危機感が希薄な人もいます。私たちの軽率な行動がウイルスをまいてしまう可能性もあるので、今回伺ったお話を友人と共有して正しい理解を広げていきたいです。学報令和3年2月号関連企画

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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