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新型コロナ、見えてきた正体

「文系学生」が研究最前線を探る《上》

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2021年2月19日更新

 新型コロナウイルス感染症(COVID―19)はどこまで広がるのか? 全世界の累計感染者が1億人を超え、感染の第3波を受けて首都圏などに2度目の緊急事態宣言が出されるなど厳しい状況となっています。ウイルスや感染症の正体が見えづらい点が不安増幅の要因に挙げられますが、國學院大學文学部で万葉集を研究する阿部咲月さん(日文3)が研究最前線の学校法人北里研究所(小林弘祐理事長、東京都港区白金)を訪れ、令和2年2月に立ち上げた「COVID―19対策北里プロジェクト」を指揮する花木秀明・大村智記念研究所教授・感染制御研究センター長(医学博士)にプロジェクトの現状を中心にお話を伺いました。

感染症研究の最前線 基礎と臨床の研究成果は?

阿部さん 北里研究所(※1)や北里柴三郎先生、ノーベル医学・生理学賞を受賞された大村智先生(※2)の名前は聞いたことはありますが、研究所におじゃましたのは初めてです。

 未知のウイルスである新型コロナの感染が拡大し、昨年3月に志村けんさんが亡くなったときは衝撃を受けました。いつにもまして手洗いなどを徹底したので風邪をひかなくなったのも確かです。正体が分かれば対応の取りようもあると思うのですが、プロジェクトはどのようなものでしょう?

花木氏 風邪をひかないということは、皆さんがそれだけ感染症に気を付けている証拠です。でも、まだまだ我慢が必要です。

 このプロジェクトは新型コロナ感染症が世界中に広がる前に「これは危ないウイルスだ」と感じ、令和2年2月に全学規模で立ち上げました。プロジェクトには「人(研究者)・物(研究設備)・金(資金)」が欠かせませんが、私たちの研究所には人と物がそろっているので、すぐにでも活用可能な「寄付」で資金を募ってスタートさせたのです。1500弱の個人、100社ほどの企業(令和2年12月現在)から寄付を頂いて、大切に使わせてもらっています。

 プロジェクトでは基礎と臨床の両面から研究しており、基礎の分野では既に使われている薬を検証したほか、アルコール以外で何が消毒に効くかを探り、風呂に入ったり洗剤で洗ったりすればウイルスは死んでしまうことを実証しました。何か特別の対策を取らなくても、日ごろの注意である程度感染は防げるのです。

 臨床分野ではノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智・北里大学特別栄誉教授の研究で開発されたイベルメクチン(※3)が治療薬として効くということが分かってきています。そのほかにも重症化を抑える薬も出てきていますので、収束への道も開けてくるでしょう。

 北里研究所では、感染症研究に関して北里柴三郎先生からの系譜が大村先生まで続いており、さまざまな施設・設備が整えられています。私たちの研究所にはP3というウイルス研究に欠かせない特別な施設が4カ所整備され、動物実験ができる施設も2カ所あります。また、東洋医学研究所という漢方の専門機関があるので、そこが中心になって後遺症に対するプロジェクトも進めています。(つづく)学報令和3年2月号関連企画


(※1)北里研究所 細菌学の世界的権威・北里柴三郎博士の精神を受け継ぎ、大学・附属研究所などで感染症研究を展開する学校法人。北里博士が明治25(1892)年に設立した「伝染病研究所」をルーツとし、大正3(1914)年、北里博士が私費を投じて現在の研究所を設立した。赤痢菌を発見した志賀潔、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智ら世界的な科学者が輩出。

(※2)大村智(おおむら・さとし) 昭和10(1935)年生まれ、山梨県出身の化学者で薬学博士、理学博士、北里大学特別栄誉教授。山梨大学・東京理科大学で学び、北里研究所などで微生物が生産する天然有機化合物の研究を行う。平成27(2015)年、駆虫薬イベルメクチン開発などに繋げた研究によりノーベル生理学・医学賞を受賞。

(※3)イベルメクチン 大村智・北里大学特別栄誉教授らが土中から発見した微生物が産生する有機化合物エバーメクチン=写真下=を用いて開発した駆虫薬。感染者の2割が失明するとされる熱帯病のオンコセルカ症や、象皮病を引き起こすリンパ系フィラリア症の特効薬として累計40億回以上も投与。北里研究所などの研究で新型コロナウイルスの増殖を阻止する効果が確認され、国内での治療薬承認に向けた治験が進められている

 

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