教授

尾近 裕幸

オコン ヒロユキ

専門分野
理論経済学、オーストリア学派経済学、比較経済システム論
本学就任
1998年04月01日
担当教科
ミクロ経済学、ミクロ経済学2、基礎演習A、基礎演習B、演習1(2)、演習2(4)、演習3(4)、前期課程・経済学史特論1(講義・演習)、後期課程・経済学史研究1(講義・演習)

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教授からのメッセージ

 「経済学は、人類文明を支える本質的要素だ。過去数世紀に及ぶ産業の近代化と、すべての精神的、知的・科学技術的、そして治療的研究の成果は、経済学の知識体系を基礎に築かれた。この知識が我々に齎(もたら)す豊穣な宝物を上手く使い熟(こな)すか、それともそのまま放置するか、それは我々自身に委ねられている。もしその知識を最大限に利用せず、その教えと警告を無視するなら、経済学を無にするどころか、我々の社会と人類を根絶することになるだろう」。これはある経済学者がその浩瀚(こうかん)な書の最後を締め括った言葉です。このように意義深く肝要な経済学を学生と共に学べることを、私は心から嬉しく思います。私は、清純な精神で経済学に触れる学生たちが、その深い洞察に、あるときは感嘆し、そしてあるときは感得する経験を重ねながら、私たちが生きる経済社会の機微に触れ、その複雑さの奥で貫徹する論理を見透すことを切望しています。他方、冷戦後の新しい時代に生まれた学生が、その瑞々しく、時に斬新な感性で、「何故...なのか」との問いを経済学の知識体系に投げ掛けてくれることを大いに期待しています。学生の皆さん、大学という知と智の広場で、自由にしかし互いの意見の違いを尊び、楽しく熱く、時を忘れるほどに談論風発しようではありませんか。
 「分かりました、でも何から始めれば良いのでしょうか?」皆さんはこう切り返すかも知れません(否、そうして頂きたいのです)。多様な応えが可能です。講義を静聴する。新聞等のメディアに触れる。人生の先輩であるご尊父やご母堂の経験に学ぶにことも一つでしょう。これらに加えて、人類の知的遺産である「古典」、「時間という厳しい審判者の裁定をくぐり抜けて」生き続ける書物、経済学ではスミス『国富論』、リカード『経済学及び課税の原理』、マルクス『資本論』、シュンペーター『経済発展の理論』、あるいはケインズ『雇用、利子及び貨幣の一般理論』等の古典を手に取り、眼光紙背に徹することに勇気を奮って挑戦して頂きたい。時には隔靴掻痒の憂を、そして時には無念を抱くかも知れません。しかし古典に挑む者は皆、そうした経験によって自らを鍛え、「人間と社会についてのマニュアル化することのできない深い洞察」を学ぶのです。
 ところで冒頭に引用した経済学者の薫陶を受け、1974年にノーベル経済学賞を授与された別の経済学者は、「経済学しか知らない者は、偉大な経済学者になることは出来ない。それは危険な人だとは言えないにしても、厄介者になりがちだ」と戒めました。この経済学者は、経済学の領域を飛び出し、政治学、法学、歴史学、社会哲学、認識論、そして心理学等にまで研究領域を広げ、古典を通じて先学の賢才と洞観に学び、以て自らも古典となる著作を遺しました。彼は優れた経済学者である前に、偉大な「教養人」、つまり「良識に満ちた判断を下す力をもつ人」だったのです。学生の皆さんには経済学と並行して、神道、様々な言語、自然科学、芸術等を幅広く学び、精神を修養し、それによって社会を生き抜く為に必要な「マニュアルにはない、非定形的判断力」を備えた教養人たることを志して頂きたいと願っています。
 ここまで二人の経済学者の言葉を手掛かりとして、私が学生の皆さんに期待するところを述べて来ました。これらの経済学者はいずれも異国の人です。そこで最後にわが国明治期の啓蒙思想家による正鵠を射た言葉を引用します。「大事なことは、人としての当然の感情に基づいて、自分の行動を正しくし、熱心に勉強し、広く知識を得て、それぞれの社会的役割にふさわしい知識や人間性を備えることだ」。
 学生の皆さんと共に学び、共に議論し、そして共に成長してゆければ幸いです。

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