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「愛する自分」探しの方法
〜親は「信号機」に〜

おやごころ このおもい

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國學院大學名誉教授・法人特別参事 新富 康央

2021年11月22日更新

近くて遠い? 遠くて近い? そんな親の気持ちや大学生の子どもの気持ちを考えます。


 「(他が)つくる」個性から、「(自ら)なる」個性へ。これは、前回(令和3年9月公開「つくる」個性から、「なる個性へ」~「愛する自分を大切に」~)のテーマでした。キリスト教の欧米社会は「つくる」文化ですが、日本は古来より「なる」文化です。

 そこで、神道精神を掲げる本学では、「漂えるものを一つに固めなす」という「修理固成(つくりかためなせ)」(『古事記』「国生み」)が教育上の根本精神です。人間開発学部も、この教育理念を基盤としていますが、来年新設される観光まちづくり学部も、地域自らが「なる」創生を追究する独自の学部です。

 しかし、「なる」にするには、「つくる」以上に、多くの手間と工夫が必要です。他方、「なる」本人自身には、なろうとする意欲が求められます。そこで、私たちが願うのが、彼ら自身の「あるべき姿」像の追求、すなわち「愛する自分」探しです。

 では、どうすれば「愛する自分」探しができるだろうか。三つに集約できるでしょう。

A「自分への拍手を」

 その方法は、以下の3点です。

①「できた」(成果)ではなく、「伸び」(過程)で拍手を。

 受験という欧米風の個人的競争主義の中では成果がすべてだったかもしれませんが、未来志向にある今は、結果よりも伸びで測る方法も持つべきでしょう。

 例えば、食事嫌いにおける「スプーン一杯の法則」。この場合、二通りの方法があります。初級編では、最初からスプーン一杯分だけ食事を盛り付けておいて、それを頑張って完食して満足感。そして明日は、もう1杯増やして完食を目指すという方法。

 もう一つは、より上級編。皿に定量盛り付けられた食事を先ずスプーン1杯食べて、明日はもっと頑張って2杯目に挑戦しようとする方法。その経過・進捗状況を可視化する試みも近年推奨されています。

②「初めて(できた)拍手」を。

 自分の良さや長所を容易に見つけることができる人は良い。だが、多くはそうはいかない。でも、「初めてできた」探しであれば、拍手も容易でしょう。「初めて遅刻しなかった」「初めて課題提出が間に合った」「初めて挑戦できた」など。

③マイナスもプラスに変えてみる「カタツムリ拍手」を。

 これは、前回も述べました。嫌われるナメクジも、美しい殻をつけてやれば(見方を変えれば)、童謡(文部省唱歌「かたつむり」)にも歌われるカタツムリです。

B「孤高を恐れない」

 「愛する自分」を追求していく中で、他者からの孤立を恐れることも起こるでしょう。特に現代は、「レーダー型」人間の時代です。つまり、他から孤立しないか、常にレーダーを張って行動する時代です。従って、「(自ら)なる」個性ではなく、「(他が)つくる」個性になってしまいがちです。そのような時こそ、思い切って、仲間や親御さん、そして私たち教師に吐露してください。実は、本稿も、学生さんからの相談への回答でもあるのです。

C 親は「信号機」に

 しかし、「愛する自分」探しに疲れることがあります。そのような時こそ、親の出番です。「雨ニモ負ケテ、風ニモ負ケテ」良いのです。「負ける」勇気も必要です。

 そこで、親御さんには、子どもたちの人生の岐路で、「止めろと赤信号、注意しろと黄信号、大丈夫と青信号」を出してほしいと願います。人生とは、ある意味「愛する自分」探しの旅とも言えます。学報連載コラム「おやごころ このおもい(第9回)」

新富 康央(しんとみ やすひさ)

國學院大學名誉教授 
法人参与・法人特別参事
人間開発学部初代学部長

専門:教育社会学・人間発達学

 

 

 

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