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コロナ禍でも通じる「先ず神事」の精神

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神道文化学部 教授 茂木 貞純

2021年11月20日更新

 神殿奉斎員として約16年間、國學院大學の祭祀を執り行ってきた茂木貞純教授(神道文化学部)は、学生たちに「先が見通せない時代だからこそ、『先ず神事』の精神を忘れないでほしい」と話す。

【前編】祭儀は原点を自覚し、時代とともに歩む

國學院大學神殿 渋谷キャンパス正門脇に鎮座する國學院大學の神殿は、天照大御神を主神とし、天神地祇八百万神をお祀りする。

清浄、そして神様の心に近づく形を

――学生に祭儀に向き合う姿勢をどう教えているのでしょうか。

 一番大事なのは形を教えることだが、形をつくった心を理解するように教えている。前提としては清めが重要なので、清らかであるということが、祭儀が成立する大前提だ。さらに作法を身に付けることで、なぜこのような形になったのか理解できるようになる。徹底して神様の心に近づくということが作法に通じる。原点は「神様にある」ということが理解できれば素晴らしいことだと思う。

――祭儀の中で、時代とともに変化している部分はありますか。

 例えば祭祀で着る女子装束は、かつては平安時代の女官の装束、十二単を簡略化した装束を着ていた。ただ、奉仕しにくいとの声があり、伝統を踏まえた上で新しい装束を考案した。

 宮中の新嘗祭にご奉仕する采女(うねめ)の方が身に着ける装束を参考にしながら、動きやすいようデザインを変えている。先代の先生が考案し、創り出してきた。國學院という大学の場は、祭式、作法、装束の調査、研究の場でもある。今は女性の神職が増えていることから、女子作法などの研究も大切なことだ。

最後の奉仕「一つ一つの祭祀に丁寧に臨みたい」

――祭儀に奉仕する心とは、何でしょうか。

 鎌倉時代、順徳天皇による『禁秘抄(きんぴしょう)』には「先ず神事 後に他事」と書かれている。鎌倉時代は武家が政権を掌握し、公家にとっては危機感をおぼえる時代だった。だからこそ原点を顧みて、本質を把握しようということだったのだと思う。

 今のコロナ禍においても共通していて、先が見通せない時代だからこそ原点を大事にしようという考えだ。神事に対する意識は時代によっても異なる。

関係物故者慰霊祭(11月1日)で祭詞を奏上する茂木教授

 ――毎回どんな気持ちで祭祀に臨んでいるのでしょうか。

 式次第は同じだが、毎回緊張する。例えば毎年11月に行う関係物故者慰霊祭は、本学創立以来の関係者や直近1年間に他界された大学に関わりがある方の御霊(みたま)を招き、慰霊するとともに、後進の行く先をお守りいただくよう祈願する祭祀だ。

 私の同僚も含め、先生や学生が亡くなっていることもあり、毎年ご奉仕のたびに緊張する。お招きした御霊が心安らかに鎮まり、後進の行く末を見守ってくれると非常にありがたい。緊張することはいいことで、学生たちも雰囲気を味わって何度も習礼(しゅらい)というリハーサルを行う。神に仕える心をしっかりと受け継ぐということだ。

 慰霊祭では、神道文化学部の学生による『慰霊の舞』や、フォイエル・コール混声合唱団による追悼歌(今年は感染症対策のため見送り)を奉納する。奉仕をする学生たちに祭祀の雰囲気をしっかり感じとってもらい、将来に生かしてほしい。

 来年3月で定年を迎える私自身にとっても今年は最後のご奉仕になる。非常に感慨深い。一つ一つの祭祀に丁寧に臨みたい。

大学は素晴らしい学びの場だということを伝えたい

――学生たちにメッセージをお願いします。

 今、神道文化学部で学ぶ学生の6割以上は神職子弟ではない。しかし一般家庭出身の学生も社家の伝統はないが、神道について学ぶ意欲が非常に強い。社家出身の学生と交流があり、切磋琢磨できることも非常にいいことだ。

 大学は、学生たちに素晴らしい学びの場と感じてもらえる場でなければならない。それが教員や職員の目標でもある。140年の伝統の中で、神道を志す学生が育ち、地域社会を守ってきた。先輩たちと同じような神職を目指して、学んでほしいと思っている。

 

 

 

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