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祭儀は原点を自覚し、時代とともに歩む

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神道文化学部 教授 茂木 貞純

2021年11月20日更新

 神道精神に基づく人材育成を標榜する國學院大學は、天照大御神をはじめ八百万(やおよろず)の神々をキャンパス内の神殿に奉斎している。年間に行われる祭儀は20回を超え、天皇誕生日に執り行う天長祭や、建国記念祭など全国の神社と同様に執り行う祭儀を始め、入学奉告祭、卒業奉告祭など学校法人ならではのものもある。

 中心になって奉仕するのが、神職資格を持つ教職員の中で、理事長から委嘱された神殿奉斎員と祭儀員だ。神殿奉斎員として16年間、國學院大學の祭祀を執り行ってきた茂木貞純教授(神道文化学部)に祭祀の移り変わりや意義について聞いた。

【後編】コロナ禍でも通じる「先ず神事」の精神

 

キャンパスで行う祭儀の意義とは

――神殿奉斎員として16年間、國學院大學の祭祀に奉仕されています。これまでどのような道を歩まれてきたのでしょうか。

 埼玉県熊谷市の神社の出身で、國學院大學と大学院で学んだ後に神職となった。神社本庁で25年間務め、平成17年4月から大学に戻って教鞭をとっている。着任当初から神殿奉斎員として、大学の神殿でご奉仕している。

 また、実家の神社を受け継いでご奉仕している。今年70歳を迎え、来年の3月に定年退職となる。最後のご奉仕ということで日々務めさせていただいている。

――國學院大學における祭祀の意義は何でしょうか。

 國學院大學は、全国で数少ない神職を養成する機関としての役割を持つ大学なので、大学の神殿や祭祀が持つ意味は非常に大きい。

 大学の母体は、明治15年に創設された皇典講究所だ。初代総裁の有栖川宮幟仁親王は、告諭で日本の『国柄』を明らかにし(国体ヲ講明)、道徳・道義心をそなえた『人柄』を養い育む(徳性ヲ涵養)ことで、伝統文化に基づく日本の根本を究明する(本ヲ立ツル)ことが重要であるとの精神を示された。

 日本の国柄と言えば、『神国』という言い方があるが、神話の世界があって、我々の世界が続き現在に至る原点だ。そういう意味で神々をお祀りすることは、原点を自覚しながらそれぞれの時代の歩みを進めるという意味がある。

 大学の場合、学生が毎年入学して卒業するという循環がある。学生を中心とした入学奉告祭、卒業奉告祭など大学独自の祭儀も含めて、年間20回を超える厳粛な祭祀ができていることは非常にありがたいことだ。私たち神職資格を持つ教職員は神殿奉斎員・祭儀員という形で理事長の命を受けてご奉仕している。

11月1日に執り行われた創立記念祭に奉仕する神殿奉斎員、祭儀員、学生ら

地域に根差す祭儀 暮らす人々の力に

――全国の神社でも祭儀が行われています。地域の神社の祭儀の意味は何でしょうか。
 
 全国には約8万の神社があると言われている。それぞれの地域で年間の決められた祭儀があり、昔ながらの祭儀を続けている。神社ごとに由緒や歴史が異なるし、祭儀の形式もさまざまだ。

 共通するのは祭儀を続けることが、地域の人が生きるための根本の力になっているという点だ。過疎化や跡継ぎといった問題があるが、それでも祭儀を続ける意義を地域の人が見出している。どんなに人口が少ない町に行っても神社や祭儀を伝えようという意識が強く残っている。

 言い換えると、祭儀は神々をお祀りすることが原点だが、地域の力となり、それが日本全体の力になっているということだ。町おこしや村おこしの一つのきっかけにもなる。

 島根県の出雲地方などに調査、研究に行くたびに実感するが、神話や伝承が残っている地域で、古いお祭りが続けられている。神道文化学部の学生たちも使命感を持ち、地域社会を支えていこうという強い思いで学んでいる。

伝統を大切にしながら新しい風を入れた「瑞玉會」

祭員として創立記念祭に奉仕する瑞玉會の学生

――國學院大學の祭祀では学生たちが日々の清掃や祭儀の準備をはじめ祭員や舞人などで奉仕しています。

 「瑞玉會(みづたまかい)」という伝統のサークルがあり、学生たちが作法や雅楽、舞などの稽古に取り組んでいる。大学でも長い歴史を持つサークルの一つだ。

 代々の先輩の教えを継いで、率先して神殿の掃除や、祭儀員の助力も含めて一生懸命やってくれるので大変ありがたい。

 瑞玉會が誕生したのは戦後だが、当時は神道に対する風当たりが厳しい時代だった。戦争に負け、これまで国や地方公共団体が密接にかかわり神社の祭儀を行っていたが一切まかりならなくなった。

 同様に大学も戦前と同じやり方では祭儀ができなくなり、新しい時代の新しい形の祭儀をつくる必要があった。そこで学生たちは伝統を守りながらも、時代ごとに新しい考えを取り入れながら、祭祀に参加してきた。当時は神職を志す学生の大半が瑞玉會に入り、熱心に活動に取り組んだと聞いている。神職の教員が中心になって、学生たちを導いていただいたことも大きい。

 本学で経験したことが、卒業後に神職になった時も役立ち、自信になるだろう。


國學院大學神殿

 渋谷キャンパス正門脇に鎮座する國學院大學の神殿は、天照大御神を主神とし、天神地祇八百万神をお祀りする。本殿は、銅板葺き流造(ながれづくり)、麹町区飯田橋(現在の千代田区飯田橋)から現在の渋谷キャンパスに全学移転したのを機に、明治・大正の実業界の元老として活躍した和田豊治理事の指定寄付を受けて建設された。昭和5(1930)年4月30日に神殿祭、鎮座祭を斎行し、翌5月1日に御鎮座奉祝祭を斎行。以後、この日を神殿御鎮座の日と定めている。

 

 

 

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