学部長挨拶

2023年4月1日更新

 国民的な大ヒットとなった、新海誠監督の3つのアニメ映画、『君の名は。』・『天気の子』・『すずめの戸締まり』。いずれの作品にも、神道やスピリチュアルな要素が描き込まれていました。ほかにも、近年はさまざまなメディア作品で、神道や日本の伝統文化の現代的な表象をよく目にするようになりました。そこには、何かしらつらい状況にある人々の願いを祈りとして表現してきたことへの、人々の変わらぬ期待があらわれているように思われます。
 しかし、実際に地域に根ざしつつそうした祈りを支えてきた神社や祭りの文化は、都市化・過疎化や少子高齢化などの影響によって、その維持・継承が難しくなってきているのも現実です。
 それでも、たとえば12年前の東日本大震災で被災した地域では、神社・神職も自ら被災しましたが、失われた命を思い、復興に向けた祈りを集め、災害の記憶を後世に伝える存在として、神社や祭り、芸能が大きな意味を持ちました。その事実は、先述した新海誠監督の作品、とりわけ『君の名は。』にとりいれられている神道のモチーフにも影響を与えているように思います。
 また、令和2年から世界をおおったパンデミックにおいて、3つの密(密集・密接・密閉)を避ける感染対策を徹底するなかで、人々が多く集まるような祭りや儀礼は中断、延期を余儀なくされていきました。疫神を鎮め祓う儀礼までもがこれまでの形態をとれなくなってしまうという皮肉な事態にもなりました。しかし、ただ何もかも中止してしまうのではなく、こうした苦しくつらい状況だからこそ人々が祈ることのできる場所として、十分な感染対策を施したうえでの神社参拝を呼びかける動きもみられました。
 表面的には多くの関心が寄せられ、にぎわっているようにみえる神道文化も、その継承という困難な課題を抱えていること、しかしそれゆえに貴重な取り組みが重ねられていることは、もっと知られてよいでしょう。
 神道文化学部は、実際に神道文化を継承する担い手となる人を育てることを大きな柱としています。祭典を奉仕するのは神職ですが、地域の人々やさまざまな組織、また地域を超えたつながりも、神道文化の継承にとって重要です。日本や世界の宗教文化に広く目を向けて比較しながら、自己の将来像をしっかり描きつつ、その実現に近づくために必要な知識、技能を身につけてほしいと願います。

神道文化学部長 黒﨑 浩行

(令和5年度 神道文化学部ガイドブックより)

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