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世の中に貢献するための「手段」を学ぶ場所

経済学部・星野広和学部長が目指す、学部の姿 ー前編ー

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経済学部長・教授 星野 広和

2023年5月1日更新

 令和3(2021)年度から経済学部を率いてきた星野広和学部長。就任の前年度に行われた学部改組や新カリキュラムの運用を行うなど、本学部の教育・研究を牽引してきた。その同氏は、「So What(そこから何が言えるのか)」の追究を大切にする人材を育成したいと考える。前2年間の振返りと学部が育成していきたい人材像について、星野学部長が語った。

 

任期1期目の振返り。学生の出口を強化する「卒論・卒業リポート必修化」

 コロナ感染症拡大による3回目の緊急事態宣言が発令された令和3年度に学部長に就任し、新カリキュラムの遂行だけでなく、オンライン授業への対応を求めながらの、変化に合わせた研究・教育を行ってきました。就任1年目は、学生がキャンパスへ十分に来ることのできない状況が続き、多くの授業は引き続きオンラインで実施しました。2年目は対面授業が復活したものの、対面とオンライン配信を組み合わせたハイフレックス授業も採用した教育活動を行ってきました。

 本学部は社会の変化や課題に応じた教育を提供すべく、私が就任する前年の令和2年度に、従来の3学科から経済学科・経営学科の2学科8コース体制へと移行したばかりでした。それまでの経済ネットワーキング学科が目指した環境や地域、情報といった諸問題に関する学びは、経済学科・経営学科に継承しています。

 学科再編とともにカリキュラム面も変更になりました。それまでゼミの加入や卒業論文の提出は任意であり、ゼミ加入者は6割ほど、卒業論文の提出は4〜5割でしたが、新カリキュラムではゼミに所属しての卒業論文、ゼミに所属しない場合は卒業リポートの提出を必修化しています。どちらを選択するかは学生の自由ですが、学部では積極的にゼミ加入を進めてきました。

 狙いは、先行研究をふまえた研究に取り組む学生を増やすとともに、学生が身につける専門性を強化することです。これまでの学部生の就職状況を見ると、就職率は9割を超え、高い成果を残していますが、より本学部の学びを活かし、それを強みにして社会で活躍できる人材を増やしたいと考えていました。

 また、本学部のブランドや学部像をより強く育みたいという思いもありました。ブランドは愛着や愛校心から生まれるものであり、卒業生が社会に出た後、「ここでの学びにより今の私がある」「この学部で良かった」という実感の積み重ねから醸成されます。それにはやはり、本学部で専門性を身につけ、それを社会で生かすことが大切でしょう。学生にとっては在学中の負担が増え、一時的には愛着・愛校心に影響しないかもしれません。それでも長期的にはブランド形成につながると考えています。

 今年度が新カリキュラムの完成年度にあたり、新カリキュラムの成果として専門性の強化を実現できたのか、ひいては学部ブランドの向上に貢献できたのかは、就職状況などから効果検証する必要がありますが、一方ですでに見られる成果もあります。

 ここ2年はゼミ加入者が8割を超えており、学生のアンケート調査結果では、ゼミ加入者(2〜4年生)の約7割が学生生活で高い満足度を示しています。ゼミ非加入者に比べて2倍近く高い結果であり、カリキュラムに対する満足度も、やはりゼミ加入者が非加入者の2倍ほど高くなっています。

 大学ならびに学部が果たす責務として、学生や保証人の満足度を高めることは重要です。ゼミという小さなグループで切磋琢磨し、仲間と議論や相談し合える環境が受け入れられたと考えており、学生の学びを積極的にする意味で大きな進歩でしょう。

 

世の中に貢献するための「総合力」を備えた人材を

 教育面において本学部が目指すのは、先に述べた専門性に加えて、人間としての総合力の涵養です。総合力とは、人間性やコミュニケーション能力、人を動かす熱意といったものです。

 日本の採用制度は多くが総合職採用であり、入社後のキャリアもゼネラリストとしてさまざまな職種・部門を経験するのが一般的です。たとえ専門性を身につけても、必ずしも希望した職種に就けるとは限りません。現実のキャリア形態とのギャップが生じます。

 おそらく多くの学生は、社会に出ると「専門的な知識だけではどうしても勝てないことがある」と気づくでしょう。もっといえば「この人には勝てない」と思うこともあるはず。しかし、人間が持てる武器はそれだけではありません。

 本学部が育成したいのは「だから何?」を常に問いかけ、答えの本質となる「そこから言えること」を抽出できる人材、つまり「So What(そこから何が言えるのか)」を追究する人材です。社会のあらゆる団体、人が活動する最終的な意味や目的は「世の中への貢献」であり、その素材として本学部の学びがあります。経済・経営の知識をつけることが目的ではなく、学修した知識を用いて社会をよくすることにつなげていく。「人としての強み」を多様に備え、総合力を武器に世の中に貢献する人材を育てるのが、本学部の独自性でありブランドなのです。

 

——後編へ続く

 

 

 

星野 広和

研究分野

経営管理論、経営組織論、経営戦略論

論文

「なぜ経営学では小倉昌男とヤマト運輸を学ぶのか」(2023/09/30)

「イノベーションの停滞と製品不具合に関する一考察:自動車用エアバッグの技術進化のケース」(2021/03/31)

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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