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「自分らしい生き方」全学でサポート

障がい学生支援のこれから

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教育開発支援機構学修支援センター 東海林孝一センター長 佐藤紀子助教

2019年6月27日更新

 國學院大學は今年度、建学の精神および「障がい学生支援に関する基本方針」のもと、「障がい学生支援に関するガイドライン」を施行しました。ガイドラインは、障害者差別解消法などに基づき、本学の全教職員が障がいを理由とする差別の解消を進め、障がいの有無に関わらず等しい教育・研究環境の確保に努めることを目的とし、建設的な対話を通じて、障がいの個別的なニーズと本学の状況や教育の本質を調整しながら合理的配慮を提供するものです。支援体制の中心を担う教育開発支援機構学修支援センターの東海林孝一センター長と佐藤紀子助教に、現状と展望を伺いました。

東海林孝一・学修支援センター長

障がい学生支援を包括的に再認識

――ガイドライン施行の背景は

東海林センター長(以下、東海林) 本学ではガイドラインを策定する以前から、障がい学生にも「入学してよかった」と思ってもらえる環境づくりに各部署で取り組んできました。学修支援センターも10年前の発足以来、いろいろな学生と関わり、彼らから学びながら支援のノウハウを蓄積してきました。今回のガイドラインという形での明文化は、こうした取り組みを全学で包括的に再認識し、一致して対応していくためです。

佐藤助教(以下、佐藤) ガイドラインの策定・施行には、国連の障害者権利条約への批准、障害者差別解消法の施行や東京都障害者差別解消条例の施行が影響しています。障がいに対する社会全体の考え方が転換する大きな流れの中で、法律や条例に沿った形で全学的な体制を整えることは重要なことです。

 本学では、学生生活課をはじめ、さまざま部署が連携して学生支援にあたっており、学修支援センターは学修面での支援を担っています。障がい学生支援においては、学修面でのサポートは学びを支える要です。そのため、ガイドラインの施行を機会に、学修支援センターが障がい学生支援の主軸となり、学部(渋谷、たまプラーザの両キャンパス)、大学院(渋谷キャンパス)の各窓口を明確にすることで、学生がよりスムーズに支援にアクセスできる体制を整えました。

佐藤紀子助教

一人一人にオーダーメード

――支援の進め方は

東海林 学生によって障壁は異なります。肢体不自由で車いすを使用している学生、心臓に疾患を抱えている学生、精神的な疾患を持つ学生…。たとえ同じ障がいだとしても、その特性も障壁も一人一人違います。学生が何に困っているのか、本当はどうしてほしいのかなど、学生本人と面談しながら最適の支援を考えていきます。したがって、オーダーメードの支援といえます。

 一方、生きづらさを抱えながらもSOSを出さない、出せない学生がいます。本学では、前期・後期それぞれ開始5週間で授業の出席率が50%未満の学生に対して、出席不振の意識付けと学修支援センターの利用を促すためのメールを配信しています。これを機に相談に訪れ、支援につながった学生も少なくありません。また、高校で支援を受けていた学生が、大学に支援体制があることを知らずに入学してくることもあります。そこで、不安を抱えている場合は入学前に学修支援センターへ相談してもらうよう入学予定者に案内を行っています。こうすることで、入学前に面談し、入学後すぐに支援を始められるケースもあります。

佐藤 支援は本人が希望し、申し出ることから始まります。各窓口で支援について説明し、ニーズを聞き取ります。その後、各学部を代表する学修支援センター委員の教員との面談を介して、お互いに合意形成を図っていきます。そして、学修支援センター委員会の承認を経て支援が動き出すという流れです。ただし、支援を求めるという発想そのものがない学生や、意思表明が苦手な学生、大学生活でどのような障壁があるかをまだ把握しきれない学生がいることも考えねばならず、ここが課題となっています。

 また、障がい学生の学修への参加を保障するために、柔軟な変更や調整を要しますが、同時に、大学の教育の質を担保しなければなりません。学部ごとに異なる授業形態との照らし合わせも欠かせません。そのため、学生と大学側との相互の対話が必要になってきます。加えて、対話が必要な理由として、学生個人の人生の選択が全て異なるということがあります。学生が支援を希望することは、どのような人生を歩んでいきたいかという学生の主体性にも関わる問題でもあるため、学生自身の語りに触れる「対話」が重要になるのです。

 一方、支援は学生本人からの申し出を原則としていますが、どのような場面でどのような支援が必要であるかを他人に分かってもらえるように説明することは案外、難しいことです。また、障がいや病気とどのように向き合うかは、各個人によっても環境によっても異なり、一様ではありません。そのため、時には、ご家族や関係者の協力を得ながら、多方面からのアプローチを考えていかなければならないと思っています。

キャリア、自立もサポート

――ガイドラインにより、学内に変化は

佐藤 担当する授業で支援策を提案してくださる教員が増えたと感じています。障がいの有無にかかわらず、どの学生にとっても役立つユニバーサルデザインの提案もあります。大きな声で話す、資料を分かりやすく作る…。こうした教員の意識は、授業の質そのものの向上につながるのではないでしょうか。

東海林 聴覚障がいがある学生に対する情報保障でノートテイカーを務めている学生からは「私たちが(ノート)テイクしやすい先生の授業は、障がいのない学生たちにとっても分かりやすい」という話がよく出ます。教員が障がい学生の学修上の障壁を取り除く努力をすることは、ファカルティ・ディベロップメント(FD、大学教員の能力開発)にも効果を発揮すると考えることができるかもしれません。

聴覚障害の学生に対するノートテイク支援は現在、約20人の学生がノートテイカーとして活動している。

――支援の課題と将来像は

東海林 支援が必要だと思われるものの、支援につながりにくい学生もいます。そんな学生たちにも「学修支援センターに相談して、授業に参加しやすくなった」と実感してもらえるようにセンターの情報発信に努めるとともに、学内の理解を広めていきたいと考えています。

佐藤 高等教育機関における学生支援には社会への接続の役割があり、キャリア支援や自立支援とも連動しています。本学は「主体性を持ち、自立した『大人』の育成」を教育目標に掲げています。障がいの有無に関わらず、全ての学生が相互に理解と尊重を深めつつ、悩みながらも自分らしい生き方を見つけていけるよう、全学的に連携して支援したいと考えています。

 

 

 

東海林 孝一

研究分野

会計学

論文

ローソンの事例に見る統合報告書の可能性と課題(2014/03/31)

「会計基準の変更が業績評価会計に与える影響の考察 -予算管理を行っている事業部制組織を中心に-」(2008/02/01)

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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