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降臨した天神の結婚に込められた意味

古事記の不思議を探る

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文学部教授 谷口 雅博

2018年12月25日更新

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 日本最古の書物『古事記』。世界のはじまりから神様の出現、皇位の継承まで、日本の成り立ちがドラマチックに描かれています。それぞれの印象的なエピソードには今日でも解明されていない「不思議」がたくさん潜んでいます。その1つ1つを探ることで、日本の信仰や文化のはじまりについて考えていきます。

 

鹿児島県南さつま市のコノハナノサクヤビメ像

鹿児島県南さつま市のコノハナノサクヤビメ像

結婚によって約束された繁栄と、奪われた永遠の命

 アマテラスの命を受け、地上世界を治めるために降臨したホノニニギは、コノハナノサクヤビメと言う美女に出逢います。ホノニニギがその乙女に求婚したところ、乙女の父神である山の神はたいへん喜んで、姉のイワナガヒメも一緒に嫁がせようとしました。ところがその姉はたいそう醜かったため、ホノニニギは拒絶し、コノハナノサクヤビメのみと結婚をします。

 実は、イワナガヒメを妻とすれば、天神の子孫は岩のように永遠不変の命を約束される筈であったのですが、コノハナノサクヤビメのみを妻としたので、天神の子孫は、木の花が咲き誇るように繁栄はするが、その命ははかないものになるだろう、と父神は語ります。その言葉の通りに、天神の子孫の天皇家は繁栄しますが、寿命が生じてしまったと言います。神の時代から天皇の時代へと移り変わっていく途中と位置付けられた神話です。

 

世界に存在する寿命の起源神話

 この神話は、バナナ型と言われる神話の類型に属するものとされています。東南アジアを中心に分布する死の起源神話です。神から石とバナナを与えられ、その選択を迫られた人間が、石は食べられないという理由で拒否し、バナナを選んでしまったために、人間は石のような永遠の命を得られず、バナナのような短い命を与えられてしまったというものです。

 『古事記』の場合は、バナナではなく、コノハナです。コノハナは、よりはかないものを象徴するものとも言えますし、美しく咲き誇る花のイメージは、天皇家の反映を象徴するものとして適していたとも言えるでしょう。

 

ホノニニギの結婚の意味するもの

 ホノニニギとコノハナサクヤビメとの結婚は、天神の子孫の血統に山の神の霊力を取り込む意味を持っていました。二神の間に生まれた子は、今度は海の神の娘と結婚し、海神の霊力を取り入れることになります。こうして初代天皇は天神・山神・海神の血統を身に帯びることとなります。

 

~國學院大學は平成28年度文部科学省私立大学研究ブランディング事業に「『古事記学』の推進拠点形成」として選定されています。~

 

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2018年12月11日付け、The Japan News掲載広告から

研究分野

日本上代文学(古事記・日本書紀・万葉集・風土記)

論文

『古事記』天孫降臨神話の文脈(2018/04/02)

旅ー『万葉集』挽歌の「旅人」ー(2018/03/25)

このページに対するお問い合せ先: 総合企画部広報課

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