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神道文化学部長が語る令和8年度のカリキュラム改定

  • 神道文化学部
  • 全ての方向け

神道文化学部長 黒﨑 浩行

2025年7月15日更新

現場で活かせる「力」を磨くコースを

―今回の教育課程改定の特徴や趣旨などについてお聴かせください。

 これまで神道文化学部では、入学者募集の際に昼間主コース・夜間主コースを分け、それぞれに定員管理をおこなうフレックスコース制を採ってきました。しかし、18歳人口の急速な減少や政府による高等教育の修学支援新制度の充実などを背景に、夜間主コースの志願者数が今後いっそう減少することが予測されます。
 このため、令和8年度より両コースを一元化して7時限制へと移行することになりました。ですが、従来通り、夜間時間帯のみの授業履修でも4年間で卒業できるような時間割編成をおこなうことにより、神社実習生の制度も維持してまいります。
 東京都神社庁の御協力のもと、都内の神社に住み込み、昼間は神社で神務実習をおこなって、夜間は大学で授業に出席する神社実習生の制度は、7時限制への移行後も継続していきます。現場で培われた技能や知識、そして神明奉仕の精神は、これまでも神社界で高く評価されてきました。
 あわせて、神職としての実践力を身につけることのできる教育課程を設けます。これを「実践的神職養成特別コース」と名づけました。神社実習生の制度も、単に長く続いてきた”遺制”としてではなく、全国各地の神社が置かれている現状に対し、あるいはこれからの時代に向け、意義あるものとして位置づけ直すことで、より前向きに発信していきたいと考えているところです。
 「実践的神職養成特別コース」を選択した学生は、夜間時間帯に開講される必修科目と神職課程科目を履修することになります。なかでも祭式科目の一部と基幹演習科目では、神社の現場で活かせる実践力・思考力・判断力を磨けるよう、特別クラスを設けて授業内容や方法を工夫していく予定です。祭式科目の「神社祭祀演習I」「神社祭祀演習II」、基幹演習科目の「神道学演習IA」「神道学演習IB」「神道学演習IIA」「神道学演習IIB」といった科目が、これらに該当します。
 なお明階総合課程の授業科目について、これまでも4年次の前期・後期に履修できるよう、夜間時間帯に配置してきました。明階総合課程とは、卒業と同時に指導的神職として活躍できる人材の育成を目的とするもので、修了後、神社本庁の成績審査に合格すれば、「明階」の資格が授与されます。
 「実践的神職養成特別コース」を選択した学生が同課程を円滑に履修できるよう、応募手続きの簡略化も予定しています。ただし、3年次までの成績に基づく選考があることは、特別コース以外の学生の場合と変わりません。

新科目はこれまでの科目・講座から

―今回の改定で加わる新科目について、これまでの科目や課外講座などとの関連はありますか。

 急速に変化していく現代社会のなかで、科目の新設は、より実践力を身につけた神職の養成を目指したものです、これまでの科目で重要なトピックになった内容を、一つの科目として独立させた上で、体系的に位置づけ直したものもあります。例へば「神道と社会貢献I」と「神道と社会貢献II」。これらは、平成14年に神道文化学部が発足した際に設置された「神社ネットワーク論」という科目を廃止して、代わりに開講するものです。
 「神社ネットワーク論」は私がずっと担当してきた科目で、都市化・過疎化・人口移動や情報化・国際化などといった社会的状況の変化と、そのなかにおける「つながり」の拠点として存する神社のさまざまな取組みを扱ってきました。この二十数年の間に、東日本大震災をはじめとする大規模災害が頻発しました。そうしたなかで、地域コミュニティの支え合いと復興の拠点としての神社や祭りの意義が、社会的にも広く共有されてきたように思います。また、災害とも関わりますが、気候変動の影響を身近に感じるなか、持続可能な環境の保全・保護といふ観点から「鎮守の杜」の価値が改めて注目されており、こうした話題については、これまでも「神社ネットワーク論」で取り上げてきました。
 加えて、例えば福島県いわき市で令和4年まで続けられた「東日本大震災 慰霊鎮魂ならびに復興祈願 千度大祓」への参列奉仕、あるいは公益財団法人日本文化興隆財団が主催し、埼玉県熊谷市の古宮神社(茂木貞純宮司)でおこなわれる「田んぼ学校」への参加など、正課外の学部事業も活潑です。令和5年からは、一般社団法人第二のふるさと創生協会に御協力をいただき、現場での観察・作業を通じて鎮守の杜を手本とする持続可能な森づくりを体験的に学ぶ機会を設けました。
 新設科目である「神道と社会貢献I」「神道と社会貢献II」では、こうした授業や活動のなかで得られた知見を改めて正課の教育課程に組みこんだもの。神道文化を学ぶ学生たちが現代社会における神社神道の役割や意義を主体的に考え、将来の実践に繋げていけるような授業づくりを図っていきます。

卒業生の活躍が学部の魅力となり

―改定によって期待される学部の新たな魅力、今後の取組みや抱負などについてお聴かせください。

 これまでも個々の授業や正課外の学部事業、また学生の主体的な取組みのなかで、少子高齢化・過疎化・人口減少や気候変動、また国際社会の急速な変化のなかでの神道文化・宗教文化の実践的な役割や意義について考えてきました。そこで得られた知見・成果を体系的な教育課程に取りこんでいくことが、今回の改定の最も大きな課題であり、それをなしえたかは今後に見えてくるところでしょう。
 掲げた課題を達成でき、神道文化学部で学んだ卒業生たちが神社界はじめ、社会でますます活躍していけば、それが学部の魅力としておのずと伝わっていくのではないかと考へています。
 また、シンポジウムや講演会などを開催することで、学外の皆さまへも広く発信していけたらと思います。

(神社新報3735号6面「國學院大學神道文化学部 教育課程の改定 学部長に聴く」より転載。仮名遣いや数字の表記は改めました)

  • カリキュラム改定の概要については、こちらをご覧ください。
黒﨑 浩行

研究分野

宗教学、宗教社会学、地域社会と神社神道、宗教と情報・コミュニケーション

論文

災害後の集落再編過程に見られる祭礼文化の包摂性(2021/02/14)

超高齢社会の到来と神社に関する意識への影響(2018/06/30)

このページに対するお問い合せ先: 神道文化学部

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