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自然の驚異をうつす蛇への信仰
―ヤマタノオロチ退治神話を知る―

古事記の不思議を探る

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文学部教授 谷口 雅博

2018年11月7日更新

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 日本最古の書物『古事記』。世界のはじまりから神様の出現、皇位の継承まで、日本の成り立ちがドラマチックに描かれています。それぞれの印象的なエピソードには今日でも解明されていない「不思議」がたくさん潜んでいます。その1つ1つを探ることで、日本の信仰や文化のはじまりについて考えていきます。

ヤマタノオロチ―島根県の石見神楽の演目「大蛇(おろち)」。スサノオが大蛇を退治する様子が再現される。

ヤマタノオロチ―島根県の石見神楽の演目「大蛇(おろち)」。スサノオが大蛇を退治する様子が再現される。

信仰と畏怖の二面性をもつ「蛇」

世界各地に伝わる神話には、「蛇」が数多く登場します。

ギリシア神話では、メデューサの髪のように、身体の一部が蛇である怪物が多く登場します。中国神話の伏羲(ふくぎ)と女媧(じょか)は、頭は人間、身体が蛇の形で描かれ、人類の祖とされます。また、キリスト教では蛇は人間に原罪をもたらした邪悪の権化とみなされます。

脱皮を繰り返す蛇は死と再生の象徴です。世界各地で神として崇められる一方で、恐ろしい毒をもって人々に災いをもたらす存在でもあり、畏怖の対象ともなっています。崇拝と畏怖とは裏表の関係なのです。

 

古事記にもみられる蛇の神話

 『古事記』ではスサノオに退治されるヤマタノオロチも蛇体神として描かれます。英雄ペルセウスが怪物を退治して乙女アンドロメダを救うというギリシア神話に基づき、ペルセウス・アンドロメダ型神話に分類されています。この型は世界に広く分布しています。

ヤマタノオロチの姿は、目はホオズキのように赤く、1つの体に八つの頭があり、体には檜や杉が生え、その長さは谷八つ、山八つにわたると言います。『古事記』には様々な姿形をした神が登場しますが、この怪物は突出して長大で不気味な存在です。何故これほどまでに長大な姿で描かれるのでしょうか。

 

なぜヤマタノオロチは不気味な姿で描かれるのか

スサノオは出雲の肥河(斐伊川)の上流の鳥髪山という地に降り、更にその川を遡った地でヤマタノオロチを退治します。肥河は西出雲を貫流する河で、出雲の人々に恩恵と畏怖とを与える河です。世界各地の神話における怪物は、人間には支配できない自然の驚異を象徴するものとして描かれているように、ヤマタノオロチもこの肥河を神格化した存在ではないかと考えられます。

ヤマタノオロチは年ごとに乙女を喰らいにやってきますが、喰らわれる乙女は、その河川の氾濫を鎮めるために神に捧げられる生贄の役割を持っていると思われます。出雲の地で毎年繰り返される神と乙女との関係が、英雄スサノオによって断ち切られ新たなる秩序が打ち立てられるというのがこの神話の骨格なのではないでしょうか。

蛇行して流れる河は蛇の姿を想像させるものです。古代の人々はこの河を巨大な蛇神として恐れ、崇拝していたのでしょう。

 

~國學院大學は平成28年度文部科学省私立大学研究ブランディング事業に「『古事記学』の推進拠点形成」として選定されています。~

 

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2018年10月29日付け、The Japan News掲載広告から

 

研究分野

日本上代文学(古事記・日本書紀・万葉集・風土記)

論文

『古事記』天孫降臨神話の文脈(2018/04/02)

旅ー『万葉集』挽歌の「旅人」ー(2018/03/25)

このページに対するお問い合せ先: 総合企画部広報課

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