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『國學院雑誌』の特集号

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研究開発推進機構 准教授 渡邉 卓

2025年4月7日更新

 昨年11月『國學院雑誌』は「創刊一三〇年記念特集 伝承文化研究の現在」として刊行され、針本正行学長による巻頭言に続き、16 本の論考が掲載された。近年の『國學院雑誌』は毎年11月号を特集号としており、各研究分野における現在の課題と研究成果とを提示し、未来の研究の在り方までも問いかけている。

 『國學院雑誌』における特集は、第12巻6号「本居春庭翁紀念号」(明治39〈1906〉年1月)を最初とする。当該年は春庭の『詞の八衢』の完成から100年にあたり、東京帝国大学内の言語学会で開催された講演筆記と論考12編が掲載された。このように『國學院雑誌』の特集は、国学者の事蹟顕彰にはじまっている。続く特集号は第14巻1号「朝鮮号」(明治41年1月)、第21巻1月号「御大礼号」(大正4〈1915〉年9月)、第24巻11月号「賀茂真淵翁百五十年祭記念号」(大正7年11月)と、不定期ながら、時勢に即した特集が組まれている。そのため、歴史的出来事や作品成立の節目に合わせた特集も多い。特集によっては連続号となる場合もあり、昭和6〈1931〉年には、仮名遣改訂問題について第37巻9・10・11・12号と全4号にわたったこともあった。このほか、昭和15年11月「創立五十周年記念特輯神道文学研究号」(第46巻11号)、昭和26年10月「大学院開設記念号」(第52巻1号)などのように、大学の周年と重ねての特集もある。大学関連としては、昭和29年5月「折口信夫博士追悼号」(第55巻1号)以降、本学関係者の長寿を祝した特集号や追悼特集も散見される。そのほか本学関連としては、文部省の科研に採択されたことによる「熊野学術調査特集号」(第64号2・3号)、「続熊野学術調査特集号」(第65巻10・11号)などもある。

 現在のように、11月号を特集号とする契機となったのは、昭和43年11月「折口信夫博士十五年祭・武田祐吉博士十年祭記念特輯号」のようである。ときの佐藤謙三編集委員長は編集後記で「この特集を計画したわたくしどもの願いの一つは、若い学問好きの人たちが、これを足場にして両先生の業績をよりよく知り、より深く進めていくことである」と記している。つまり、年祭や追悼号も国学者顕彰の延長線上にあり、次世代の研究を志向させるためといえよう。

 これ以降、追悼や別途特集が組まれ年間に複数回となることもあるが、基本的には11 月号をもって特集号としている。今後も多様なテーマのもとに、未来を志向する特集が組まれていくことであろう。

『國學院雑誌』第12巻6号「本居春庭翁紀念号」

國學院雑誌について

学報連載コラム「学問の道」(第65回)

渡邉 卓

研究分野

日本上代文学・国学

論文

「上代文献にみる「吉野」の位相」(2024/03/22)

「中世の日本書紀註釈における出雲観―『釈日本紀』にみる「出雲」の文字列から―」(2021/03/31)

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