令和5(2023)年度より人間開発学部の学部長に就任した太田直之教授。同氏に、これからの学部が目指す姿を聞くと「何かを大きく変えるのではなく、これまでのコンセプトを一層強化していくこと」だという。そのコンセプトとは、人間力を備えた人材の育成。この実現のために、少人数教育と実践的教育に焦点を当てていくと話す。
2つの“特色”をより強化し、人間力へとなげていく
本学部の開設以来、一貫して大切にしてきたのは、学部理念に基づく「人づくり」つまり「人間力」の育成です。近年、社会から強く要請されている人間力は、文部科学省の学習指導要領でも言及されてきました。では人間力とは何か。本学部では「その人がその人らしく生きる力」と考えています。私が学部長となってからも、こうした考え方の上に、研究・教育を続けていきます。
人間力の育成に向けて、本学部は学生の教育面で2つのことに力を入れてきました。今後も継続しながら、学生が自ら見通しを立てて探究的、協働的に学ぶことができるように充実させていきたいと思っている2本柱です。
1つ目は少人数教育です。きめ細やかな指導ができるのはもちろん、教員や学生同士の距離が近くなるため、お互い相談しながら、励まし合いながら努力する状況が生まれます。人間力は人と人とのつながり、関わりから育まれます。このような環境を作るために、1年次から学生10人前後に対して1人の指導教員がつく「ルーム制」を採用しています。多くの教員が必要になりますが、学部設立時にこだわって実現した体制です。
2つ目は、現場での実践的な教育です。例として、平成21年から教育インターンシップを行ってきました。これは学校や保育の現場における実践体験型授業科目で、私立大学としては非常に早い段階から導入したといえます。そのほか、健康体育学科ではスポーツ関連企業やチームに赴くスポーツインターンシップも行っています。
さらに、教育実践総合センターと地域ヘルスプロモーションセンターという学部付設のセンターでは、「共育フェスティバル」や「地域交流スポーツフェスティバル」など、地域と連携したイベントに関わることができます。運営自体も学生が積極的に行っており、実践的活動が生まれています。
現場での経験が学生の人間力を高めます。学んだ理論を実践の場で活かし、それをまた座学でフィードバックするという学問サイクルを循環させて、教育の質をさらに高めていくことが理想です。
このような環境で学んだ本学部の学生は就職後の離職率が低いという特徴があります。学生が低年次から現場を経験するので、社会に出てギャップを感じにくいのも理由の1つでしょう。さらに、卒業生は先述のセンターで行う「教育実践フォーラム」にも参加しています。卒業後も人間開発の学びを深め、最新の情報を入手するために、本学部を拠点として活用できることが、現場の環境変化に適応する点で貢献しているのだと思います。
他学部連携や未来のキャンパス構想で、さらなる発展を
今後は、他学部との取り組みも推進していきたいです。たとえば渋谷を拠点とする学部の学生は、所属学部の主免許を履修していれば、本学部のカリキュラムを活用して幼稚園教諭、小学校教員の副免許取得が制度上は可能です。初等教育現場の人材不足が問題となる中で、これらの免許取得者が増えれば、社会課題の解決につながるでしょうし、本学部の存在意義も増すはずです。離れたキャンパスでの履修や取得単位数の増加など、さまざまなハードルもありますが、オンライン授業の活用などにより環境整備を進めていきたいですね。適切な環境や情報を届ければ変化を促せますし、免許の選択肢が増えるのは学生にもメリットです。
同一キャンパスに開設された観光まちづくり学部との連携も大切なテーマです。たまプラーザキャンパスは、これまで人間開発学部のみでしたが、令和4年度から観光まちづくり学部が加わりました。2学部になったことで、たまプラーザキャンパスの学生数も将来的には2500人を超える規模に増えます。新しいキャンパスの文化や独自性をどう作るかも非常に重要になります。
本学部では、中期5ヵ年計画に基づく事業構想として、学生や地域の方々が集い学び合う「ユニバーサルキャンパス」を掲げています。さまざまなイベント等を契機に、学生だけでなく幅広い年代の多様な人々との交流を生み出したい。それが学生の人間力を高めるとともに、キャンパス文化や独自性を醸成していき、引いては本学部の発展にもつながっていくと考えています。
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