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学問により、
誰かの人生を豊かにできる人材を

文学部・矢部健太郎学部長が目指す、学部の姿 ー後編ー

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文学部長・教授 矢部 健太郎

2023年4月15日更新

 令和5(2023)年度から2期目に突入した文学部の矢部健太郎学部長。同氏は、本学部が輩出したい人材について「大学での学びを身近な人や社会に還元できる人」と表現する。加えて、研究機関としては、学問の内容を正しく社会に伝えることが使命だと捉える。詳しい内容を聞いた。

 

文学部の学問は、人生に面白みを与えるものばかり

 学部を運営する上で大切にしたいのは、教職員が気持ちよく働き、それにより学生が気持ちよく学べるサイクルを作ることです。

 優秀な教員を揃えるだけでなく、各教員が自分の研究を心から楽しめる状況を作る。すると、学生にも自然と楽しく教えるようになります。学部に関わる職員も同様です。職員が気持ちよく働ける環境になれば、学生への対応も向上していくでしょう。そのためには労務管理が鍵になります。

 さらに教育面の展望としては、ここで学んだことを長く社会に還元できる人材を輩出したいと考えています。

 小説、絵画、音楽、歴史、哲学、語学といった学問・芸術は、学ぶことで人生に面白みを与えるものばかりです。どれも私たちの身近にあり、趣味になりやすい。賞味期限が長く、何歳まででも楽しめる。しかも、これらのジャンルが世の中から途絶えることは考えられないでしょう。

 だからこそ本学部の出身者は、ここで培った学問を誰かに還元することで、人々の人生を楽しくすることに貢献してほしいのです。子どもたちに本を読み聞かせる、地域の歴史を次世代に伝える、美術館・博物館の展示や解説に協力するなど、いろいろな形があるでしょう。職業としてではなくても構いません。ボランティア活動や老後の楽しみでも良いのです。

 小さな範囲、身近な人で構わないので、自分が学んだ学問で他の人の人生を豊かにしてほしい。それが社会還元になると考えています。

 

コロナ禍で特定の研究が停滞するのは望ましくない

 研究機関としては、私たちが扱っている学問の実像や魅力を社会に発信することも大切な役割です。

 というのも、本学部の学問分野は時代の流れや社会情勢で注目度が大きく変化する傾向にあります。コロナ禍では災害史や疫病史といった、パンデミックに直結する学問が脚光を浴びました。また、哲学などにも注目が集まっています。

 学問の注目度が上がるのは喜ばしいことですが、反対に注目度の低下を感じた学問もあります。たとえば中国文学や外国語文化です。外国との往来が減ったことが要因でしょう。この状況下で中国を学ぶ意味があるのか。そういう考えもあると思います。

 しかしこれは学問の未来のために望ましくありません。たとえば中国文学の研究は、現代の中国だけではなく、数千年の歴史を対象にしているもの。仮にしばらく外国との行き来が無くなろうと、この学問から得られるもの、現代の参考になるものは多分にあります。

 私たちの役割は、そういった誤解を解き、学問の実像を伝えることです。そのためにひとつ考えているのは、若い世代へ向けたアプローチです。これから自分の研究分野を決めようという方たちに向けて、本学部の教授が内容の濃い授業を届けることです。短い時間の体験授業ではなく、たっぷりと時間を取って、深い理解促進を狙います。

 もともと本学部では、例年3月に「文学塾」という高校生向けの90分授業を行ってきました。こういった取り組みにもっと注力しようと考えています。

 さらに今後強化したいのは、他学部との連携です。上述の「文学塾」も、他学部と共に行えるような方法を模索していきたいですね。また、特に学問領域の近い学部とは、一緒になった取り組みを積極的に考えていければと思います。

 例として、令和4年度に開設した観光まちづくり学部は、歴史や文化を研究対象に含めるという点で共通項があります。本学部は渋谷キャンパス、観光まちづくり学部はたまプラーザキャンパスと離れていますが、オンライン授業を活用した取り組みも考えられる。大学だけでなく、國學院大學北海道短期大学部や國學院大學栃木短期大学との連携も模索していきます。

 本学部は、國學院大學の中でもっとも歴史の長い学部です。いわば「長兄」にあたる存在。だからこそ、自分たちの価値を上げることだけが務めではありません。國學院大學全体の価値向上を意識しつつ、学部として価値を高め、誰かの人生を豊かにできる人材をより多く輩出していきたいと考えています。

 

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矢部 健太郎

研究分野

戦国・織豊期の政治史・公武関係史

論文

「中近世移行期の皇位継承と武家権力」(2019/11/01)

「豊臣政権と上杉家」(2017/11/01)

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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