ARTICLE

学びに深化を…学部学科を超えて

創立140周年 針本正行学長に聞く【後編】

  • 全ての方向け
  • 教育
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

学長 針本 正行

2022年11月7日更新

 今年で140周年を迎えた國學院大學は、次の10年、さらにその先へ向けてどのような進化を遂げようとしているのか。少子高齢化や人口減少、経済格差の拡大、地方の衰退、国際情勢の不安定化など、日本と世界の不確実性が高まる中で、守るべきものと、変えるべきものとは何か。針本正行学長に聞いた。

 

―― 不確実性が高い時代にあって、どのような人材育成と教育を目指すのか

 絶えず変化する環境に対応できる人材を積極的に養成し、社会に貢献する大学を目指していきます。「日本」を究めるための教育研究を推進し、広く世界に向けて発信すること、さらに、他者を理解し、尊重したうえで、共生社会を主体的に生きる人材を育成したいと考えています。

 これからは、教員と学生との接し方も大きく変わるのではないでしょうか。学術的な領域にこだわらず、同じ問題意識を持っている人たちが、学部学科を超えて、集まり、リモートだけではなく、人との関わり合いの中で実感できる学びが求められる時代になっていくことでしょう。その中で、既存の知を問い直し、抗う精神を涵養し、共に学び、共に生きることで、自分の生き方やあり方が社会とどう関わっているのかを常に問いかけながら、社会の一員として生きる自分を学生たちには意識してもらいたいと思います。

 また、現在大学が求められているのは、問題解決型であると同時に、問題提起型でもある人材の育成です。問題の提起と解決の両面の能力を身につけ、イノベーションを起こす力が涵養され、日々新たな課題が生まれ続ける現代社会に、積極的に関わっていくことができるようになります。このような人材育成をめざす教育プログラムの提供を目指します。

―― 中期5ヵ年計画では、教育の多様性の一つに社会人に対するリカレント教育が謳われている

 働き方改革や人への投資が叫ばれるなかで、キャリアアップのために社会人が学び直す機会や時間が増えることが期待されます。社会人の多様な学びのニーズを捉え、多忙であっても学べる学修環境・システムを整備していきたいと思います。コロナ禍で得られたリモート授業に関する知見を活用し、質の高い学びをいつでも、どこでも提供できることが理想です。

 高齢化、医療の充実とも相まって、退職後にかつてない長い時間を過ごす長寿社会が到来しています。退職後の人生を豊かにし、充実させるためにも学びの継続は重要です。向学心旺盛な高齢者に向けた学修機会の提供も注力していきたい点です。リカレント教育は、高齢化社会、多様な価値観を認める社会に資する教育を提供する大学及び大学院の社会的責任の一つとして認識しています。

―― 海外から日本で学びたいという人たちを受け入れることも多様性の一つになる

 今回の中期5ヵ年計画では、令和3年度時点で、0.39%の外国人留学生比率を令和8年度までに2%にする目標を掲げて、戦略を立てています。ただ、多くの留学生を獲得すればよいというものではなく、海外から日本に学びに来る人たちにとって、國學院大學で、日本の文化、歴史を生み出してきた「国柄」を学ぶことにどういう意義を見出すことができるのかが重要です。また、世界が求めているのは、日本や母国で日常生活、経済活動にすぐに還元できる能力の涵養かもしれません。一方で、本学での学びは、社会での仕事に活用できる能力を涵養するだけではなく、日本の歴史や文化、それを醸成してきた土壌を学修することによって、世界人としての共通教育を目指すものです。國學院大學で学修することは、それぞれの国や地域の歴史・文化とは何かを問いかける契機になると思います。さまざまな地域社会で生活をすることや経済活動をすることの意義を見出し、また、皆で共に生きるかけがえのなさを実感することにつながります。このような他の大学にはない本学の魅力を発信していきたいですね。

―― 150周年、そしてさらにその先へ向けて、変えるべきことと守るべきことは

 少子高齢化社会が進行するなか、大学進学者数は2040年頃には、50万人前後になることが予想されています。AIやICTを活用した新しい発想による授業形態が模索され、10年、20年後には当然のように受け入れられる時代になっているはずです。人生100年時代と言われますが、それぞれの人が、いつ何を学びたいかは違います。さまざまな希望に対して、大学側が頑なにならずに、受け入れる姿勢がより必要になってくることでしょう。

 AIなどのテクノロジーを活用することで、医療と同じように、一人ひとりの学生が求める学びに対応できるような仕組みが進んでいます。カードリーダーに学生証をかざすと、AIが教職員によって蓄積された学生一人ひとりの学びの情報をもとに、「今日はこういう学修をした方がいい」「君はこの領域が理解できていない」など、学びの助言を行うサービスも出てくるでしょう。

 多様性に富み、学生一人ひとりの学び方に寄り添うカリキュラムが求められる時代だからこそ、学生自身が主体的に自らの学びの計画、目的を問い直す必要があります。教職員は、「個別最適な学びにおける学修の目標設定はどうするのか」「個々の学修者の学びの途中経過や達成度合いをどう評価するのか」などの課題に向き合わねばなりません。

 本学は、皇典講究所の開黌にあたり、初代総裁の有栖川宮幟仁親王が述べられた告諭の冒頭にある「凡学問ノ道ハ基ヲ立ツルヨリ大ナルハ莫シ」を建学の精神の基底としています。社会的要請の変化やテクノロジーの進展により、教育方法、学修方法、支援体制は日々刷新していきながらも、物事の真理を探究するために、既存の知を疑い、知が構築されてきた歴史に思いを致し、多くの人と学び合い、共に生きるという、教育、学修の本義は守るべきものです。

 

 

 

このページに対するお問い合せ先: 広報課

MENU