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地方創生の鍵は「金儲けより、人儲け」

地方と都会のこれから(後編)

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観光まちづくり学部 准教授 嵩 和雄

2022年5月16日更新

 2015年から始まった政府の地方創生(第1期)は、移住を促進することで、定住人口の増加を目指したが、うまくいかなかった。2020年度から始まった地方創生第2期は、「関係人口」の概念が登場し、移住だけではない新しい地方とのかかわり方を模索する方向へと向かい始めた。観光まちづくり学部の嵩和雄准教授は「地方創生は、金儲けだけで考えてはいけない。人儲けと言えば冗談になるが、関係人口という地域のファンづくりを通じ、人の繋がりを大切にすることが重要だ」と話す。

【前編】コロナ禍を機に地方移住 この流れは本物か

【中編】観光まちづくりを学び、東京と故郷を繋ぐ人に

 

―― 第2期の地方創生では関係人口の増大に焦点が移った

 当初、「交流人口」という言葉は、現在の「関係人口」を含む概念だったが、次第にその意味が矮小化され、「交流人口=観光入れ込み客数」と捉えられるようになった。その結果、地方創生を支える人材が「観光客」と「移住住民」の二極で語られるようになってしまった。

 交流人口と定住人口の間に位置し、両者を繋ぐ「関係人口」は、地方創生にとって重要な役割を担う。この言葉が政策用語として認知されるようになると、関係人口の人数がKPI(重要業績評価指標)になってしまう恐れもある。そもそも、「関係」とは「深い関係」とか「浅い関係」など「質」で測るものであり、人数で成果を評価するには無理がある。関係人口をどう測り、どう評価するのかについて議論が展開されており、答えは出ていない。

 沖縄で開かれた関係人口に関する会議に参加したが、「関係の質を担保しつつ、さまざまな人たちを招いてくることが重要であり、地元に負担がなく、なおかつ、都会の人も満足するバランスとるのは難しいので、関わり方には多様性があっていい」との意見が印象的だった。

―― コーディネートを担う世話役の存在がカギを握る

 都会の人と地元の人の両方の気持ちが分かる人の存在と、両者が繋がる仕組みづくりが必要になる。繋がる「場」づくりに関しては、リアルの場だけではなく、オンライン上にもコミュニティを作れる。ただ、地元の人がどうかかわることができるかが重要なので、コーディネーターと都会の人の間だけでオンラインの場を作っても広がりがない。重要なのは「偶然性、偶発性の出会い」であり、そのためには現地に行くことが大事だ。この「場」づくりに関しては、地域の中で積極的に活動する必要がある。地域の活動をリードするのは、完全なよそ者では難しい。世話役、翻訳者、媒介者などの役割を果たせる人たちをどう作っていくかが課題だ。

―― 関係人口を増やすために心がけることは

 無理をしない関係づくりを心がけるべきだろう。今までも、「交流疲れ」という言葉があった。今後は、「関係疲れ」と言う言葉が生まれるかもしれない。熱意を持ってがむしゃらに頑張ることは大切だが、一方通行になっては長続きしない。時には、構わない期間を設けるというやり方も必要だろう。

 もうひとつは、地域側の意識として、「地域に来た人は永遠に定着してくれる」と考えないほうがいい。「いつか、地域を出ていくかもしれない」という現実を受け止めることによって、無理のない関わり方ができる。一度関係を築いた人が、何かの事情で都会に帰ったとしても、別の形で地域を支えてくる人になってくれれば、関係人口は広がっていく。

 人口減少が続く日本で、「定住人口」を増やすことだけを考えると、小さいパイの奪い合いになる。「関係人口は、さまざまな地域にかかわる」という考え方が大事だ。地域のことを好きで、何かあったら支えてくれる存在がたくさんいることは、その地方にとってプラスになる。相互交流が重要なので、その逆もある。都会の人が困ったら支えてくれる地方、地方が困ったら全国の関わった人たちが支えてくれる。そういった関係づくりができる地域が生き残っていくと思っている。稼げる地域を創るというのは地方創生の柱のひとつだが、稼ぐのはお金だけではない。人の繋がりは非常に重要だ。

―― 今、地域創生に求められていることは何か

 「地域らしさ」や「地域の魅力」が失われてはならない。その地域の文化を守ってきた人へのリスペクトは重要だ。地域の人口減少は深刻で、集落が消滅してしまう危機が高まる中で、地域文化の担い手そのものがいなくなる懸念もある。祭りをどう継承していくのか、神社や寺をどう継承していくのかなど、課題は多い。若者が地域文化に触れる機会をどんどん作っていくことと、地域側からも発信することが求められている。グリーンツーリズムや都市農村交流で地方に出向き、地元の人たちと仲良くなってリピートしていき、関係が深まっていく。

 このきっかけづくりの中で重要なのは、対等の関係をどうつくるかだ。都会の人と地元の人が机を並べて、ともに学ぶ機会をつくること、そして、社会に出てからも、交流の場をつくり続けていく中で、頼り頼られというキャッチボールを続けていくことが大事だ。

嵩 和雄

研究分野

地域計画

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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