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観光まちづくりを学び、東京と故郷を繋ぐ人に

地方と都会のこれから(中編)

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観光まちづくり学部 准教授 嵩 和雄

2022年5月16日更新

 地方創生に繋がる地域のまちづくりを進めるには、「交流人口」だけでなく、「関係人口」を増やすことが必要で、地方と都会の両方の価値観が分かる人が重要な役割を担う。人と場所が繋がる仕組みを構築するには、世話役、翻訳者、媒介者の役目を果たすコーディネーターの育成がカギを握る。観光まちづくり学部の嵩和雄准教授は「コーディネーターを育成することは大学の役目であり、観光まちづくり学部の学生たちに大いに期待している」と話す。

【前編】コロナ禍を機に地方移住 この流れは本物か

【後編】地方創生の鍵は「金儲けより、人儲け」

―― 関係人口とは何か

 「関係人口」は新しい用語なので、定義にあいまいな部分があるが、交流人口と定住人口の間に関係人口があって、その地域の出身であったり、過去にその地域で働いていた経験を持っていたり、あるいは、都会と地域を行き来したりする人などさまざまなパターンがある。

 地域とのかかわり方はいろいろある。交流イベントに参加したり、移住しなくても、都会にいて、アンテナショップなどで地域の特産品を購入したり。地域課題解決を目的にふるさと納税をするのも関係づくりのひとつだ。地域の農家と繋がって、ダイレクトに野菜を購入するCSA(地域支援型農業、Community Supported Agriculture)というかかわり方もある。あるいは、自分が職業上持っている知識やスキルを無償提供するプロボノ的な活動や、副業として地元のNPOの活動をサポートすることもできる。

 「モノ」や「コト」をきっかけに繋がりを作り、「トキ」を共有することでさらに関係が深くなる。結局、カギになるのは人なので、繋がる仕組みを組み立てる人、すなわち、地域側にコーディネートする人がいるかどうかが大事になる。

―― コーディネーターはどのように育成するのか

 コーディネーターの人材育成で重要な役割を果たすのは、大学であると確信している。國學院大學が新設した観光まちづくり学部は、まさにその最前線にある。コーディネーターに必要な資質は、何よりも好奇心を持つことだ。

 「興味の井戸」という言葉があるが、井戸は深く掘ると、円錐型になり、穴の周囲が広がっていく。好奇心を持って専門分野を深く掘り下げると、周辺分野まで知識が広がっていく。観光まちづくり学部での学びは、そういう広がりの分野が非常に多い。観光を学ぼうとすると、地域のことも知らないといけないし、まちづくりを学ぶために都市計画のことを知らなければならないし、まちの歴史も知らなければならない。好奇心を持って、何か興味のあるものを見つけ、それを深掘りしていくことで、結果的に広い分野について知ることができるのが観光まちづくり学部で学ぶ魅力だ。そのベースとなる好奇心を持つことが重要なので、教員は、学生たちの好奇心をくすぐるような仕掛けを与えていくよう心がけている。

―― 学生たちには期待することは何か

 学生たちの中には、地方出身者も少なくない。人と人を繋ぐという役割はまさに地方出身者に期待する部分が大きい。大学入学を機に上京して、都会の暮らしを体験し、地方と東京の違いを肌で理解することができる。そして、卒業後に故郷に帰り、人と人を繋ぐ架け橋の役割を果たしてもらいたい。

 また、新入生の75%は、首都圏出身の学生なので実際に観光まちづくりの現場体験を通して、地方のことを学んでもらうことを期待している。こうした首都圏出身の学生は、おそらく都会に出てきた団塊世代の孫の世代であり、田舎に故郷がない世代だ。観光まちづくり学部のカリキュラムの中には「観光まちづくりインターンシップ」を設けている。2~3週間、地元企業や観光協会でインターンシップを経験する。単なる職業体験にとどまらず、地域に入り込み、地元の地域づくりを体験し、地元の人たちの暮らしに触れる機会を作ってもらいたい。

 生活者の視点で地域を見ることができれば、価値観が変わるはずだ。拙著『イナカをツクル』(コモンズ)でも書いたが、田舎を知らない若い人には、自分だけの田舎をつくり、心の拠り所となる第二、第三の故郷を持てるように地域との関係を築いてもらいたい。東京で大きな災禍が起こった時、「田舎においでよ」と声をかけてもらえるようになることが理想だろう。(つづく)

嵩 和雄

研究分野

地域計画

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