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歴史ある大学院として国学の学統を次代に

大学院開設70周年 佐藤大学院委員長に聞く

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大学院委員長(文学部教授) 佐藤 長門

2021年12月20日更新

 國學院大學大学院は、昭和26(1951)年の文学研究科修士課程開設から70年の節目を迎えました。以来、同研究科に博士課程、さらには法学研究科、経済学研究科と順次、拡充を図り、優れた研究者や高度な職業人を数多く輩出してきました。世界的な競争が激化し、グローバルに活躍できる高度な専門人材の育成が強く求められるなか、歴史ある大学院の一つとして、その役割をどう果たそうとしているのでしょうか、大学院委員長の佐藤長門文学部教授に聞きました。

若木タワー5階に掲げられている「國學院大學大学院」の銘板
渋谷キャンパス再開発前の旧校舎でも大学院生たちを見守っていた

――大学院を開設して70年になりました。これまでの歩みをどのように捉えていますか。

 本学は皇典講究所を母体に国史や国文、国法などを研究する教育機関として発足し、大正時代に大学令により、早稲田、慶応義塾、同志社などとともに大学に昇格した私立8大学の一つです。今も文学部や神道文化学部では教員の5-7割が卒業生という、国学研究の学統を築き上げ、脈々と守っていることが特徴の一つにあげられます。大学院もこの強みといえる伝統を継承してきた一方で、時代の変化に合わせた改革への取り組みも怠らず、この70年の間に着実な発展を遂げることができたと受け止めています。実際、学位授与数をみると、今年3月現在で博士号の授与が大正12年の三矢重松博士以来700件と文科系大学院では国内屈指の実績を誇っています。

――日本では大学院修了後の就職難など解決すべきいくつかの課題が指摘されています。

 本学でも大学院修了後のキャリア形成を確実なものにしようと、いわゆる出口戦略への取り組みも本格化させています。その一つとして法学研究科に公務員養成コースを設けたほか、経済学研究科には税理士資格の取得を目指すカリキュラムを用意するなどの実効性のある施策を講じ、成果を挙げています。同様に文学研究科では、学部生のときに取得しなかった教員免許を改めて取ることができるようにもしています。

――大学院での学びの機会をもっと増やそうということなのでしょうか。

 社会人を含め、できるだけ多くの学部卒業生に大学院で学び、専門的知識を深めることに挑んでもらいたいと思っています。このため令和2(2020)年度からは複数の教員から論文の指導が受けられるコースワーク制を導入したほか、国際交流にも力を入れ、提携している中国・南開大学との学術シンポジウムをオンラインで2年ぶりに再開し、論文集の作成も進めています。また、こうした大学院の中身をよく知ってもらおうと、学部生全学年を対象にした大学院の体験授業も、今年から文学研究科ではじめました。これらに加え院生対象の奨学金制度も経済支援型と学業奨励型の二本立てにし、手厚い支援が受けられるように見直しました。

今年11月から始まった大学院体験授業。参加した学部生からは「大学院で学ぶイメージがわいた」と好評だ

――これからの大学院はどうあるべきなのでしょうか。

 文学にしても哲学にしても、学問は古代から人間とは何かを解き明かすところから始まっています。その重要性は何ら変わっておらず、学問を軽視すると国の足元が揺らぎかねません。したがって学術研究と教育の場としての役割を担う大学院は、いっそうの充実が図られるべきでしょう。その一環として、社会の変化に合わせ多様化する学びの要求に柔軟かつ的確に対応できるようにしていく必要性もあると考えます。

 

 

 

佐藤 長門

研究分野

日本古代史、古代王権・国家の権力構造論

論文

「奉誄儀礼と王権継承」(2020/11/15)

「女帝と王位継承」(2020/06/10)

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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