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【文学部新学部長に聞く】客観的論証で目指す知的闘争

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文学部長・教授 矢部 健太郎

2021年5月21日更新

 コロナ禍に見舞われ、國學院大學も遠隔授業などの対策を強いられる多難な時代に直面しています。皇典講究所からの歴史を継承する文学部を率いることになった矢部健太郎学部長は、「文学部の学びは人間の根本的な課題を探求し、誰もが納得できる客観的な論証を目指すところにある」と「知的闘争」の重要性を指摘します。さらに、「國學院の学統を受け継ぎつつ、限られた環境の特性を生かすよう模索して新しい学問につなげたい」と語ります。

環境変化に直面して

 幼いころに昔話やおとぎ話に触れない人はいないでしょう。実は、「よりよく生きる」ことを教える昔話などを研究することも文学部の学びの一部であり、古代ギリシャ哲学に端を発する「よりよく生きるとは」といった人類の根本的な課題を追及する文学部の学びは「学問の源」といえます。コロナ禍や東日本大震災のような非常時には無力感が募ることもありますが、最前線の現場で尽力する人々の精神的な支えとなる小説なども、文学部の学びの成果なのです。

 「文学部不要論」がいわれますが、学問とは学びたい人が学ぶもので、科学立国や就職に役立たないから不要というのは筋が違います。文学部の学びの真髄は、主観を排除した客観的な論証を目指すところにあります。ある事柄を人に納得させようとしても、独りよがりな考え方では突っぱねられますが、きちんとしたデータや根拠を用意すれば将来まで見通した論を展開できます。

 コロナ禍という異常事態に見舞われ、遠隔授業という新しいスタイルが続いています。実感としては「リスナーの気持ちが分からない」というラジオ放送のようですが、対面授業とそっくり同じことをやろうと心がけています。また、パソコンの画面を通してできることもあると思い、古文書の折り方を取り上げてみました。文書を折りたたんで封をする手元を映し出したところ好評でした。限られた環境であるなら、その特性を生かす方法を模索することも教員の務めではないでしょうか。

学生の「充実した4年間」のために

 國學院設立趣意書に「国史・国文・国法ヲ授ケ」とあり、国史と国文の講究から文学部は始まりました。現在は哲学・史学・日本文学・中国文学・外国語文化の5学科で研究を継承しています。教員には本学出身者も多いですが、その割合が高すぎない点は注目に値します。学統を守るため内部で研究者を育てつつ、外から優れた人々を招いて新たな学問の在り方を目指すということです。

 学部の舵取りは、学生に「充実した4年間だった」と思ってもらうために何ができるかが重要だと考えています。弱いとされる就職についても早い時期から出口を考えさせたいですね。民間企業への就職に向けて文章表現など文学部ならではの指導もできるでしょう。4年間の学びで、言葉によって自分の考えを具現化するスキルや、データを集めて結論を導き出すプロセス、客観的な論証方法を身につければ、学生時代の何倍も長い社会人の時間に活かせるはずです。

 一方、優れた人材を世に送り出すには、大学院の魅力が欠かせません。大学院生をしっかり教育することと、大学院生が後輩である学部生をしっかり指導することが学統の学統たる由縁でしょう。引用に値する先輩方の研究が数多く発表され続けていることこそが、文学部の学統の重みであると学部生に気づかせたいですね。

新学部長の横顔

 豊臣政権を中心に研究を続けていますが、歴史は時間がたたないと見えてこない部分があり、史料の見極めも難しい。反対論者を納得させるような客観性を出せるかが歴史学の難しさであり、務めなのかなと思います。

 10歳から剣道の稽古を続け、在学中は体育連合会剣道部に所属し、現在の段位は五段です。息子の応援が趣味の一つでもあり、小学生時代にはソフトボールのコーチとして付き合い、コロナ禍のステイホーム中は一緒に流行のゲームに挑戦しました。(談)

 

 

矢部 健太郎

研究分野

戦国・織豊期の政治史・公武関係史

論文

「中近世移行期の皇位継承と武家権力」(2019/11/01)

「豊臣政権と上杉家」(2017/11/01)

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