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國學院大學の英語教育で活用されるCALLシステムと三ラウンド・システム

教育開発推進機構 土肥 充 教授 前編

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教育開発推進機構 教授 土肥 充

2021年4月7日更新

 英語を学ぶ意義は、人それぞれだと思うのです――と、土肥 充・教育開発推進機構 教授は話す。高い英語力をもとに外国で学びたい、働きたいという人もいれば、決して高度なレベルでなくても、世界を理解するための手がかりとしての英語を求める人もいる。レベルも目標も、多種多様。だったら大学の英語教育は、その多彩なありように対応しなければいけないのではないか。
 令和3(2021)年4月、國學院大學の英語教育が生まれ変わる。その中心人物のひとりとして、語られる言葉には、静かに熱がこもっていた。

 

 

    英語を勉強するなら、ペラペラに喋ることができるようにならないとダメだ、と思い込んでいる方はいないでしょうか。そんなふうにゼロかイチか、できる/できないという二極に分けて英語学習をとらえることはない、と私は考えています。
 英語のレベルも、そして英語を学習する目的も、人によって本当にさまざまです。学習者によっては、「ある程度できる」というレベルを目指してもいい。そんな寛容な意識が、英語を勉強するにあたってあってもいいはずです。
 もちろん逆に、英語力を鍛えて留学したい、英語を活用する職に就きたいと思い、高いレベルを目指す方の場合は、その目標に応じた学びの環境があることが望ましい。ただ私が学生さんと触れ合っていると、英語が苦手な方ばかりでなく、たとえハイレベルな英語力を持っていても、どこか自信がなさそうな方に出会うことがあります。

 つまり、英語学習にあたっての目標や、各人のレベルというのはグラデーションがあり、千差万別です。だからこそ、大学での英語教育においては、個々の目標とレベルに応じた英語力の育成をしていきたい。國學院大學での英語教育においても、私はそう考えています。各学部の専門課程の英語教育もあれば、全学部にかかわる共通教育としての英語教育もあります。


 ここからは共通教育についてのお話になりますが、私が本学に着任する以前から、久保田正人・教育開発推進機構 教授を中心に、國學院の伝統を継承しながらも英語教育のさらなる改善が進められてきました。そして平成31(2019)年4月に英語教育センターが開設され、久保田先生がセンター長に着任され、同時に本学に移ってきた私も少しでも新しい風を吹き込みたいと考えました。
 他の共通教育の諸科目と同時に、國學院大學の新たな英語教育は、この令和3(2021)年度から実践されていきます。
 まずはカリキュラム。学生の英語力のレベルと授業のレベル、そして学生の興味関心と授業の内容をよりマッチさせていくために、新しいカリキュラムを立ち上げました。1年生の前期は英語Ⅰ、後期に英語Ⅱを履修した後、2年生以降は英語Ⅲ・Ⅳ・Ⅴといった授業を、各学生のレベルに合わせてとってもらえるようにしています。しかも、たとえば「英語Ⅲ(英字新聞を読む)」といったように内容も示すことで、学生が興味をもった授業を選べるようにしてあります。
 さらには、入学してきた時点で既に英語力が高いという場合があります。帰国子女であるとか、高校時代から英語が得意という方の場合は、基礎的な授業を飛ばして英語Ⅲ・Ⅳ・Ⅴといった授業をとることができるようにしているんです。

 授業の内外で用いられるのは、CALL(Computer-Assisted Language Learning)システムです。インターネット経由でアクセスできる多様な教材が用意してあり、特に語彙学習とリスニングの学習を中心に、動画も用いながらトレーニングを積むことができるようになっています。

      

    これは私の前任校である千葉大学の竹蓋幸生先生と先輩・同僚の研究者たち、そして私自身も参加し、四半世紀にわたる時間をかけて開発してきた、コンピューターを用いた英語学習のシステムです。
 ここで、疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。コンピューターを用いた英語学習は今どき珍しくないし、動画も含めてリスニングの学習をするだけだったら、YouTubeなどにいくらでもコンテンツが溢れているじゃないか、というようなことですね。ただ、手軽にYouTubeで英語を聞けるからといっても、わからずに躓くと、そこで諦めてしまうという事態は容易に起こりえるのではないでしょうか。やはり、それぞれの学習者の特性に、システム自体が対応していなければいけません。
 CALLシステムは、竹蓋先生が提唱した「三ラウンド・システム」という、三段階の理解を促す指導理論に基づいています。わからないことは無理なく、繰り返し学習ができるようになっているのです。外国語学習において繰り返しが大切だというのは当然のことですが、YouTubeでわからないものを繰り返せといわれても、すぐに飽きてしまうことでしょう。あるいは、学校の英語の授業の予習で、単語を調べておきなさいといわれることも多いかと思いますが、その面倒くささが学習者の障壁になってしまうこともある。
 CALLシステムでは、辞書情報や発音も簡単に確認できるようになっていますし、三段階の学習に応じたヒントの情報も用意されています。徐々に理解が深まり、力がついていっていることを学生が――授業の外でもオンライン学習を続けながら――実感できるようなシステムになっているのです。

 授業やCALL以外の環境も、充実しています。英語教育センターではTOEIC・TOEFLテストを学内で実施しますし、そうしたテスト対策や留学への準備、もちろん学修方法への質問も受けつける英語学修相談という機会もあります。ネイティブ・スピーカーの方が中心となった会話を楽しむことができるイングリッシュ・ラウンジも設置されています。
  それぞれの目標とレベルに、きちんと対応する。授業の内外で、私たちは全面的に学生たちをバックアップしていきたいと考えています。
私自身、こうした英語教育の実践は、そのまま私自身の研究内容と重なります。後編でお話ししたいのは、現在の英語学習のビジョンを培ってきた、私自身の歩みです。それは、三重の山奥から始まります――。

 

 

 

 

土肥 充

研究分野

英語教育、CALL、教育工学

論文

國學院大學における TOEIC L&R IP のスコア分析(2022/03/01)

MoodleとCALLシステムによるオンデマンド英語授業の実践—受講者による印象評価の量的・質的分析—(2021/03/20)

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