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【先輩に聴く】能楽を支え続ける人と人との繫がり

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国立能楽堂営業課営業課長補佐兼宣伝編集係長  羽鳥道成さん(平2卒・98期文)

2020年11月20日更新

 伝統芸能の公開、伝承者の育成などを行っている日本芸術文化振興会に属する国立能楽堂(東京都渋谷区)で営業と広報を担当し、能楽の魅力を発信し続ける羽鳥道成さん(平2卒・98期文)。振興会が管轄する国立劇場(東京都千代田区)、国立文楽劇場(大阪市中央区)に勤務したほか、文化庁に出向するなど多くの経験を積んだそうです。コロナ禍で主催公演は長期休演に追い込まれましたが、「人との繫がりを大切に」との信条から新たな道を発見したと言います。

――なぜ日本芸術文化振興会に

羽鳥 高校時代から歌舞伎に興味を覚え、大学時代もキャンパスにいるよりは観劇代稼ぎのアルバイトや劇場通いのほうが長かったかもしれません(笑)。そこで、伝統芸能の魅力を伝えるお手伝いができたらと選んだのが今の職場です。能楽堂を振り出しに国立文楽劇場など多くの仕事を経験し、2年ほど文化庁に出向して外から自分の組織を見つめ直すという貴重な体験もさせてもらいました。

 さまざまなポジションを経験してきましたが、お客様であったり実演家であったり「人」が欠かせない劇場がメーンの仕事ですので、「人との繫がりを大切に」という思いは常に頭の中にあります。しかし、文化庁という外から振興会を眺めたことで、「専門的な知識を活用すればお客様は集まる」という悪い思い込みに気づきました。情報発信すると、ファンの方がその情報をご自身で取捨選択されます。能楽に興味のない方に興味を持っていただくのが集客の仕事だということです。能楽堂の営業はチケットを売るだけではなく、能楽の魅力を広く知っていただく努力が必要だとも思い知らされました。

 能楽堂では実際の能舞台のほかに研修能舞台も備え、平日は研修生がプロの能楽師、狂言師を目指して稽古を積んでいます。稽古がないや土日の公演日に団体鑑賞のお客様限定で舞台上でのすり足を体験していただいたり、能面をつけて能楽師の視野を体験してもらったりしてきました。能楽に対する敷居を下げるための努力ですが、リピーターのお客様に飽きられないよう工夫もしています。

 能とともに能楽を構成する狂言には、國學院大学出身で人間国宝の山本東次郎先生や若い人にも人気の野村萬斎さんのような方もいますが、能はまだまだです。院友の若手能楽師らと新たな試みにも取り組もうと考えています。

――新型コロナウイルスが世間を騒がせている

羽鳥 能楽堂でも2月末から6月末まで休演が続きました。「能楽堂を忘れられたら困る」という思いに駆られて情報発信を続けました。もちろん、新たな試みにも挑んでいます。若い女性向けのスマホアプリでは中堅・若手能楽師が撮影した動画と併せて能楽堂を紹介する場内ツアーの動画を配信します。ユーザーである若い女性300万人に能楽と能楽堂を知ってもらえるチャンスです。これまで意識しなかった能楽堂の地元・千駄ケ谷にも目を向け、鳩森八幡神社や日本将棋連盟など〝ご近所様〟とのコラボも模索しています。異ジャンルとの連携や足元に目を向けるようになったのはコロナの影響といえます。

感染防止対策の一環として、販売する客席を半分にして7月から公演を再開。座れない座席には特製のシートが取り付けられた。※現在はほとんどの席が利用できる

――コロナ禍に直面する学生にメッセージを

羽鳥 人とのリアルな繫がりを取り続けるのが難しい時期ですが、積極的に人と関わってほしいと思います。「能は敷居が高い」と敬遠されがちですが、いろんなものに目を向けることができるのが学生時代でもあります。コロナが収束してキャンパスに戻れたら、同じ渋谷区にある国立能楽堂に足を伸ばしてはいかがでしょう? 夏には学生向けの鑑賞教室を開催していますので、そのような機会を捉えて能楽に親しんでもらえればうれしいですね。

■日本芸術文化振興会と国立能楽堂 日本芸術文化振興会は文化庁の外郭団体となる独立行政法人。昭和41年に特殊法人国立劇場として発足し、平成2年に伝統芸能と地方の舞台芸術を保護・育成するための芸術文化振興基金が法人内に設けられたのを機に現在の名称に変更。古典芸能から現代劇、沖縄の芸能まで含めて6つの劇場を運営し、そのうちの一つである国立能楽堂は昭和58年オープン。

外国人観光客や能楽鑑賞は初めてという観客向けのコンテンツも充実させている


はとり・みちなり

國學院大学文学部文学科を卒業し国立劇場(現日本芸術文化振興会)へ。国立能楽堂などで制作畑を歩んだ後、平成20年から2年間、文化庁に出向。芸術文化振興基金の基金部を経て26年から現職、令和2年から宣伝編集を兼務。

 

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