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【先輩に聴く】現地でしか知ることのできない情報を求めて

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小学館サライ編集部兼ライフスタイル局編集長 今井康裕さん(平3卒・99期史)

2020年11月20日更新

 國學院大學の院友にさまざまな経験や人生の指針を伺う「先輩に聴く」。今回は、小学館が発行する月刊誌『サライ』の編集業務に長く携わる今井康裕さん(平3卒・99期史)に、ご登場いただきます。『サライ』は歴史や文学、旅行、グルメなどにまつわるシニア層向けの多彩な情報を発信し続けています。新型コロナウイルスの感染拡大により、編集作業に影響が出ましたが、読者の知的好奇心に応えるため、こだわり続けるのは「現場感」。今井さんは「インターネットに情報があふれている時代ですが、本当に興味深い情報は現場へ実際に足を運んでこそ発掘できるもの」と語ります。

--出版業界を志望した理由は

今井 歴史を学ぶことが好きで、大学では史学を専攻しました。歴史はいろいろな史料を読む学問です。ゆくゆくは未来の史料になるような記事や本を残したいと思い、出版社に入りました。

--『サライ』の編集方針は

今井 「現場感」を大切にしています。取材先の現地には、実際に行ってみなければ知りえない情報がたくさん潜んでいます。ですから、私たち編集者は可能な限り、ライター、カメラマンと一緒に現場へ行くようにしています。最近では、苔の美しさで知られる平泉寺白山神社(福井県勝山市)を取材した際に偶然、早朝に小雨が降ってきたんです。苔の美しさは雨に少し濡れた早朝により映えるのですが、実際に目にして苔の美を実感できました。良い写真も撮ることができました。また、門前には土産物店が全くなく、宮司に理由を尋ねると、「静かな雰囲気を後世に残すため」とのことでした。現地に行かなければ知ることのできない情報です。他の取材でも常に、現地の学芸員や郷土史家らからは、地元では当たり前であっても全国的には知られていない面白い話を伺うことができます。

--コロナ禍で、どんな工夫を

今井 現在は通常の編集態勢に戻りつつありますが、緊急事態宣言後は一時期、地方取材に行けなくなってしまい、つらかったです。でも、目先を変えてみました。例えば、小説家の安部龍太郎さんと巡る紀行連載「半島をゆく」では急きょ、ふだんは誌面で取り上げることの少ない東京都内を題材にしました。江戸城近くに存在した江戸時代の「半島」がテーマです。取材班もいつもなら6、7人態勢なのですが、「密」を避けるために4人に減らしました。私は都内に30年以上暮らしていますが、取材先では初めて知ることも多く、とても興味深かったです。『サライ』の取材では各地の神社を取り上げることも多く、院友にお会いする機会は多いです。今回の都内を巡った紀行記事は来年1月号(12月9日発売)に掲載予定ですので、ぜひ手に取ってみてください。

--『サライ』の未来像は? 後輩にもメッセージを

今井 『サライ』の魅力は日本のさまざまな文化を扱っていて、奥が深いところです。編集に長年携わっていても、常に新しい発見があります。今後の誌面に大きな変化はないでしょう。とはいっても、古くからの読者も多いですから、厳しいご意見を頂戴することもあります。読者をつなぎとめていくには、新しいテーマや見せ方を工夫していかなければなりません。そのためにも、現地取材をこれからも大切にしていきたいです。ネット情報を見ていると何となく分かったような気になってしまいますが、学生の皆さんも自分の足を使って、見聞を広げてください。


いまい・やすひろ

 國學院大學文学部史学科卒業後、小学館に入社。『週刊ポスト』『DIME』などの雑誌編集に携わり、『サライ』では副編集長も歴任。昨年7月からは、サライ編集部の編集者と、書籍編集部門の編集長を兼任している。プライベートでは父子で「日本百名城」巡りを達成。在学中はウエートトレーニング同好会に所属。

 

 

 

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