ARTICLE

難題を解決 国を救った人物の正体は?

「蟻通明神の縁起」(國學院大學図書館所蔵)

  • 全ての方向け
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

教育開発推進機構准教授 新井 大祐

2020年5月24日更新

 「縁起」は仏教の「因縁生起(いんねんしょうき)」(この世の全ては因と縁により存在する)に端を発し、転じて寺院や神社の由緒を指すようになった。神社縁起では、祭神の鎮座伝承や祭礼の由来、霊験などが主となるが、中世中頃には本地垂迹(ほんじすいじゃく)や和光同塵(わこうどうじん)(神仏が衆生救済のため人として俗世に現れる)思想のもと、神として鎮座する前の、前世や今生での人としての有り様を描くものが多く作られた。室町時代頃からは「御伽草子」としても流布し、そうした物語類を「本地物(ほんじもの)」と称する。

※無断転載を禁じます

 『蟻通明神(ありとおしみょうじん)の縁起』も本地物の一つで、和泉国(現大阪府南部)の蟻通明神の由緒を説く。美術史家の下店静市氏の旧蔵で、詞書のみ『室町時代物語大成』収載。

 〈もろこしの大王〉から日本に、ほら貝とともに「貝の中に五色の糸を貫き通せ」という難題が突きつけられる。朝廷が「解けねば侮り、攻めて来るだろう」と動転する中、〈頭の中将〉という殿上人(てんじょうびと)が糸を結び着けた蟻を貝の中へ通して解決し、国を救う。後に中将は、人々に「元より自分は神である」と告げて虚空へ消え、蟻通明神として祀られた、との筋立てである。

 なお、平安時代の『枕草子』にすでに同趣の蟻通縁起が見られ、同神をめぐる所説は古くより知られるものであった。学報連載コラム「未来へつなぐ学術資産研究ノート」(第10回)

研究分野

中・近世神道思想史、社寺縁起

論文

「中世の『日本書紀』註釈に見る『古事記』観-「三部書」言説を標として-」(2018/03/)

「「学生の社会性向上」の観点から見るSAによる「教員補助」の意義と可能性-國學院大學におけるスチューデント・アシスタント制度の取組から-」 (2017/03/)

このページに対するお問い合せ先: 広報課

MENU