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疫病を鎮め、平安を祈る祭祀・芸能

井上頼寿ノート『京之山』No.4

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研究開発推進機構准教授 大東 敬明

2020年4月22日更新

※無断転載を禁じます

 いつの時代も疫病の流行は恐ろしい。このため、それを鎮め、平安を祈る祭祀、芸能が各地に伝承されている。その一つが、今宮神社(京都府京都市北区)周辺で春に行われる、やすらい祭(やすらい花とも)である。これは、花で飾った風流傘を中心に、赤や黒の長髪をつけた人々(大鬼や羯鼓(かっこ)〈小鬼〉と呼ばれる)が行列し、また、神社を始め、いくつもの場所で踊る。これによって、疫病を流行らせる神を鎮め送ろうとするものである。

 井上頼寿(1900~79)は京都周辺の祭りや行事を調査した民俗学者であり、『京都古習志』『近江祭礼風土記』ほかの著書がある。大正15(1926)年、頼寿は、今宮神社のやすらい祭を見学に行っている。その時の記録が、彼のノートである『京之山』No.4(國學院大學蔵、井上氏旧蔵資料、大正14年10月~15年6月)の中に収められている。

 このノートには、花で飾った御幣や風流傘、境内の図、踊り方の説明、傘の下へ入れば疫病にかからないとする信仰があることなどが記される。

 現在のような時期に、疫病鎮めの祭りについて安易に書くべきではないのかもしれないが、やすらい祭の資料をみると、時代が異なっても変わらない願いや、疫病に対する恐れを実感する。
 國學院大學では、京都府・京都市と連携して、井上頼寿ノートの調査などを進めている。学報連載コラム「未来へつなぐ学術資産研究ノート」(第9回)

 

 

 

研究分野

神道史、神道思想史、祭祀・祭礼

論文

神道印信類の集成と伝播―真福寺大須文庫所蔵資料にふれながら―(2023/09/00)

『神道沿革史論』以前の清原貞雄―外来信仰と神道史(2023/03/20)

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