ARTICLE

10度目の「3.11」
災害と宗教を考える【後編】

宗教者が寄り添い、支える復興

  • 神道文化学部
  • 神道文化学科
  • 全ての方向け
  • 教育
  • 文化
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

神道文化学部 教授 黒﨑 浩行

2020年2月21日更新

 2万人近くの犠牲者を出し、いまだに5万人が「ふるさと」を離れて避難生活を余儀なくされている東日本大震災。未曾有の災害で國學院大學の院友(卒業生)や教員が体験した実例から、宗教とりわけ神道が果たすべき役割と今後の課題を探ります。後編では震災被災地にとどまらず全国の被災地に赴いて支援と研究を続ける神道文化学部の黒﨑浩行教授にお話を伺います。「祭礼や民俗芸能が『ふるさと』を忘れないためのよりどころになり得る」と強調する黒﨑教授は一方で、「人的要因で避難場所となれない神社も多い」と課題を指摘しています。

祭礼、民俗芸能が「よりどころ」に

 宗教社会学の教鞭を執る黒﨑浩行教授が、東日本大震災の被災地を初めて訪れたのは、発生から1カ月余りたった平成23年4月30日。同僚教員らと福島県を経由して宮城県気仙沼市に向かったそうです。7月には福島県いわき市の大國魂神社を訪れ、山名隆弘宮司(昭39卒・72期史、平27修・123期博後史)とご子息の隆史禰宜(平2卒・98期史Ⅱ、平3修・99期神専攻)に被災の様子を聞き、実際に沿岸部の惨憺たる状況も目の当たりにしました。

 以来、震災被災地だけで15カ所を定期的に訪れる黒﨑教授が現地で感じ取ったのは「神社がコミュニティの中心として存在している」ことと「祭礼や民俗芸能が『ふるさと』を忘れないためのよりどころになり得る」ことだそうです民俗芸能学会福島県支部などの調査によると、震災で途絶えた民俗芸能のうち3分の1が既に復活したといい、新たな動きとして「震災前に失われたものを復活させる取り組みもある」(黒﨑教授)といいます。復活した祭礼などの現場では、再会を喜ぶ人々の姿が見られ、その光景について黒﨑教授は、「街の復興とか難しいことを話し合うのではありません。苦しいこと、困っていることなど将来に対する不安も含めて本音の部分を共有し合う場になっています」と分析します。神社の境内とは、地域住民が本音で語り合える肩肘張らないコミュニティの中心として存在し、「ふるさと」を守るための象徴にもなっているのではないでしょうか。

熊野神社(宮城県女川町)の神輿渡御には國學院大學の学生たちも駆け付けた。(平成29年5月、黒﨑教授撮影)※無断転載を禁じます

震災が伝える多くの課題・・・そして「共存」へ

 震災以降、神社界のネットワークを通じた支援の輪も広がり、熊本地震などでも存在感を示しています。國學院大學の院友にも山名宮司親子のように復興や支援に尽力する人は多くいます。黒﨑教授は、首都直下や南海トラフ地震など今後に予想される大災害に際し、「ふるさと」を守るために神道をはじめとする宗教が果たすべき役割について、①慰霊・鎮魂の祈り②大自然や神仏に対する畏れの受容③年代・世代を超えての記録・伝承④被災者の受け入れ態勢整備―などを挙げています。実際に、福島の浜通り地方を中心に長引く避難生活によって民俗芸能の担い手不足に悩む地域が多いことは明らかです。また、境内などへの避難所設置については、東京都宗教連盟の加盟団体調査で半数以上の宗教施設が「常駐する管理者が不在」との人的要因などを理由に「受け入れ意向なし」とする現実もあります。

くろさき・ひろゆき 専門は宗教社会学。近著に『神道文化の現代的役割―地域再生・メディア・災害復興』(弘文堂)がある。

 「被災した現実を忘れたいと願う人がいることも事実」とした上で黒﨑教授は、「研究者には寄り添うことしかできませんが、復興に取り組む神社界や現地に飛び込んでいった院友たちと國學院大學との協力態勢を支えていきたい」と強調します。課題も多く残るとはいえ、神社界などが災害時に果たすべき役割は大きく、地域住民から期待されていることも確かなようです。

 多くの宗教者によって支えられる「ふるさと」を守る祈り。被災地だけでなく、多くの日本人の心のよりどころとなる「ふるさと」で続けられていくことでしょう。

 

災害と神道 黒﨑教授が指摘する実例

■東日本大震災で被災した神社:4585社(平成23年7月、神社本庁調べ)

■神社が避難所・救援拠点に:紫神社(宮城県気仙沼市)、月山神社(岩手県陸前高田市)、今泉天満宮「にじのライブラリー」(同)

■神社界ネットワークによる救援・支援:神道青年全国協議会、下谷神社(東京都台東区)による仮社殿・鳥居寄贈

■神社再建・祭礼再開・コミュニティ維持:みんなの鎮守の森植樹祭(宮城県山元町の八重垣神社)、集団移転に伴う神輿渡御ルート変更(宮城県気仙沼市の八幡神社)、本学の学生らが神輿渡御に参加(宮城県女川町の熊野神社)、熊本の県立球磨工業高と志岐八幡宮による支援(福島県南相馬市の山田神社)、四社合同神幸祭の斎行(福島県いわき市の諏訪神社など)、「請戸の田植え踊」再開(福島県浪江町の苕野神社)

■慰霊・鎮魂・復興祈願:福島での千度大祓、古谷館八幡神社の慰霊碑(宮城県気仙沼市)

 

避難所として「神社」

○ 地域住民に知られた存在である

○ 広い境内、建屋(社殿、社務所など)がある

× 神社そのものが災害危険地域に存在する

× 社殿などが免震・耐震構造ではない

× 鳥居、石灯籠など倒壊の恐れのある建造物がある

× 責任者(神職)が常駐していない

黒﨑 浩行

研究分野

宗教学、近世近代日本宗教史、宗教と情報・コミュニケーション

論文

超高齢社会の到来と神社に関する意識への影響(2018/06/30)

被災地の祭り・祈りを支援する学生ボランティアと宗教学者(2018/01/31)

このページに対するお問い合せ先: 広報課

MENU