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神武天皇を導いた三本足のカラスーヤタガラス

古事記の不思議を探る

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研究開発推進機構 教授 平藤 喜久子

2019年12月17日更新

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鳥居前に掲げられた八咫烏(熊野本宮大社・和歌山県)

鳥居前に掲げられた八咫烏(熊野本宮大社・和歌山県)

 平安時代中期、清少納言は随筆『枕草子』のなかで、「にくきもの」(にくらしいもの、不快なもの)として、忙しいときに長話をする人や、こっそり訪れてきた恋人に吠え立てる犬などとともに、群れて鳴くカラスを挙げました。真っ黒い姿で群れ、ゴミを荒らしたりするカラスは、たしかに人に恐怖を与える動物でしょう。

しかし、神話に登場するカラスは、とても頼りになる存在。日本の国の成り立ちにも大きく貢献しました。

 『古事記』中巻の最初に登場するカムヤマトイワレビコは、日向の国(現在の宮崎県)から国を治めるため東を目指します。その道のりは苦難に満ちたものでした。刃向かう敵との戦いのなかで兄を失う経験もします。熊野(和歌山県)の山では、荒ぶる神の毒気でカムヤマトイワレビコやその家臣たちも気を失ってしまう事態になりました。このときは、天にいる神々が剣を下して危機を救いました。

 このように数々の危機に見舞われるカムヤマトイワレビコたちのため、天の神はヤタガラスを遣わすことにします。ヤタガラスが先導するようになると、彼らの旅は、うって変わって順調なものとなりました。ときに反抗するものも現れますが、知恵や武力で平定していきます。そうして大和に入り、橿原の宮(奈良県橿原市)でカムヤマトイワレビコは天下を治めることになります。初代の天皇である神武天皇の誕生です。

 ヤタガラスは、目的地へと安全に導くすぐれたナビゲーターといえるでしょう。このヤタガラスに、ボールをゴールへと導いて欲しいという願いが託されたのでしょう。日本サッカー協会のシンボルは、ヤタガラスです。

 さて、サッカー日本代表チームのエンブレムをみてみると、ヤタガラスは、三本足。ヤタガラスを神使とする熊野の神社(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)でも、三本足で表現されています。

 ヤタガラスとは大きなカラスという意味。神話からわかるヤタガラスの特徴は、それだけです。足が三本だったとは記されていません。中国で、太陽のなかには三本足のカラスが住んでいると伝えられていました。黒点を表しているといいます。この伝承が日本に伝えられ、太陽神アマテラスが使わしたとされるヤタガラスの姿に影響を与えたのだと考えられます。
日本の各地に、カラスにお供え物をし、ついばむ様子で吉凶を占ったり、烏勧請といって招いた烏に餅を与えて豊作かどうかを占ったりする神事や習俗があります。厄介者のイメージのカラスですが、幸福へと導く、縁起のいい鳥でもあるようです。

平藤 喜久子

研究分野

神話学 宗教学 宗教史

論文

”史”から”話”へ―日本神話学の夜明け(2018/03/01)

しあわせの神話学(2018/01/01)

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