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基礎と実践、そして主体性を
令和「新時代」の「新」経済学部

CHANGE&CHALLENGE

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経済学部長・教授 橋元秀一

2019年12月21日更新

 令和2年4月、國學院大學経済学部は現行の3学科制から経済学科、経営学科の2学科8コース制(ポイント1)に生まれ変わります。昭和41年に当時の政経学部から独立する形で誕生して以来、50年を超す歴史を刻んできた同学部の改組は、平成17年の経営学科開設以来。15年ぶりに装いを新たにする経済学部はどう変わるのでしょうか? そして、どのような学びを得ることができるのでしょう? 「CHANGE&CHALLENGE」を掲げる改組をリードする橋元秀一学部長に「令和新時代」の経済学部の姿を聞きました。

ポイント1 平成の学びを2つに集約 今回の改組では、地球環境と開発▽地域づくりと福祉▽情報メディアの3コースで深めてきた経済ネットワーキング学科での学びを経済・経営の両学科に引き継ぎ、経済理論とデータ分析▽経済史▽地域経済▽日本経済▽グローバル経済の5コースが経済学科に、ビジネスリーダー▽ビジネスクリエイター▽ビジネスアナリストの3コースが経営学科に、それぞれ設置されます。

 

新しい時代に力を発揮できる人材を

――経済学・経営学を取り巻く環境は変化しているのでしょうか

橋元学部長(以下・橋元) 1990年代以降の日本はバブル崩壊、リーマンショックなどを経験し、経済の目指すべき方向性が見えない事態に立ち至っています。世界をリードしてきた日本経済も問題にぶつかりながら、なかなか事態を打開できず低迷を続けている状況となっています。

 新しい時代を担う主体性ある若者(ポイント2)をどう育て、新しい時代をデザインしていくかが重要になりますが、残念ながら日本経済全体の中で若者の活躍を組織できず、能力を生かし切れていません。その意味で、新しい時代に力を発揮してもらえるような環境を整備するかということが大切になってきます。

ポイント2 主体性ある学生を育てる 新しい学びでは、経済学部が独自に展開するファシリテーター・アドバイザー(FA)がさらに注目されます。1クラスに1人のFAが入り、教員とクラス内を回りながら授業を進めており、高校生向けの「E Tour(イー・ツアー)」でも、FAが先導役として活躍しています。FAの活動を通じて社会人として生かせるスキルを身につけるもので、主体性を持って学びをリードする学生が育っています。「管理職になればばかを見るとを思っているので、目指したがらない」(橋元学部長)という近年の傾向を受けて創始したシステムですが、「具体的な結果を目標とせず、チームをまとめるファシリテーターの仕事に魅力を感じるタイプの学生も出てきている」(同)という新たな展開も見せているそうです。

高校生向けの「E Tour」では、FAが経済学部の特色をわかりやすく紹介

学びの中で基礎力を身につける

――そのような時代に経済学部を改組する目的と意義は何でしょう

橋元 24年前に立ち上げた経済ネットワーキング学科は、その当時に見られた新しい諸問題を現地に行って調査し、新たな方向性を見出す人材育成を重視しました。しかし、当時は新しいと思われていた情報化、地域問題、環境問題なども、今では当たり前となっています。経済学部全体が現代の新しい諸問題に取り組むべきだと判断し、経済ネットワーキング学科での学びを学部全体へと発展的に解消させるのが狙いです。

 もう一つは、主体性が求められる時代を迎えたことで、「経済学や経営学の中で何を追求していくべきか」を学生自身に考えさせねばなりません。その前段階として徹底的に基礎力を身につけてもらうために、「アクティブラーニング」(ポイント3)を積極的に導入し、学びの中で基礎力を身につけた学生が自らさまざまな問題の解決を考えられるように大きく舵を切ったのです。1年生の基礎演習で6年ほどやってきましたが、企業からもらった課題に対して解決策を考えるような課題解決型かつ実践型の授業を一層充実させたいと考えています。

 残念ながら昨今の若者は、いわゆる指示待ち人間になっています。対応力は高いかもしれませんが、それでは企業が新しい方向に舵を切る動きにはつながりません。自分自身で個人的な意思と夢をしっかり持つ人こそ、新しい時代を提起できる人材となるのです。ですから、自分はどう生きたいのか、どんな社会になることが望ましいのか、どのようなことを企業や組織がやる必要があるか、ということを自ら考えられる人材を育てたいですね。

ポイント3 さらにアクティブな学びに 1年次必修の「基礎演習」は20人程度の少人数クラスで、教員とFAがサポートします。新入生はグループワークやプレゼンテーション大会を通じて、学びの基礎スキルを身につけることになります。

 「基礎演習」ではこれまで6年間にわたって、外部から「10年後のコンビニエンスストアの姿」(日本チェーンストア協会)、「若者の本離れに対して歯止めをかけ、読書に親しむようになるために、今、本屋がどのような価値(取り組み)を提供できるか?」(青山ブックセンター)といったテーマを提示してもらい、10回のグループワークによって解決策を検討。年末のプレゼンテーション大会で報告してきました。今年は東京五輪・パラリンピックによる影響を踏まえたうえで、その後の日本社会のあるべき姿を経済、社会や企業経営を踏まえて具現化し、実現に向けた具体的な取り組みを提案することをテーマに、検討を重ねてきました。12月4日の大会では、事前の予選を突破した7チームが、競技施設の利活用やスポーツ振興による健康寿命の延伸などを課題に掲げ提案を行いました。

12月に行われたプレゼン大会では、1年間の学修の成果が発表された

主体性を「カタチ」にする

――改組による教育の特色は何でしょうか

橋元 徹底的に専門基礎力と実践力(ポイント4)を鍛えることを目標としている点です。まず、学部共通科目や各学科の基礎的科目を必修化します。えてして学生は簡単に単位が取れる科目に流れやすく、履修内容を見ると学びに系統性がありません。基礎力を徹底的に身につけたうえで次のステップに進ませるために必修科目を強化したのです。

 また、実践力を学ばせるため、ビジネスゲームを利用した模擬実践のような授業や経済学部独自のインターンシップを展開するなど、実戦に近い場で経験を積ませることにも注力したいです。最新の現場について話を聞く「現代の企業経営」や、「雇用と働き方」という授業の中で経営者や働く者目線でのオムニバス授業を整備します。

ポイント4 専門基礎力と実践力の強化 学部共通科目や各学科の基礎的科目の必修化は、経済学・経営学の専門基礎力の強化につながるはずです。系統性を持った「基礎」を身につけることで、「教育の質保証」も実現できるでしょう。経済学を学び、さらに実践するうえで欠かせない英語に関しても、ネイティブによる授業を重視。以前からの共通教育だけではなく、ビジネスイングリッシュなどの専門科目や次のステップの英語授業も全てネイティブによる授業とし、実践力を鍛えます。

――その他に改革はありますか

橋元 ゼミも主体性を発揮させる形へと改革し、卒業論文や卒業リポート(ポイント5)の提出も増やすつもりです。さらには、一般の講義型授業の「日本の経済」、いわゆる経済学入門もアクティブラーニング化します。現在は新たな教科書作りに取り組んでいて、来年度にトライアルして再来年度には確定版を出版したいと想っています。そのようにして、学生の主体的な意識を生み出す授業に改革したいのです。経済学の入口を改革するとなると教える側も手探りになりますが、これまで2年ぐらい検討会を重ねてきています。

 学部での学びからは離れますが、経済学部では「絆づくりプロジェクト」を平成21年に始めました。先輩と後輩の絆を作りたいと言うことでプロジェクトを始め、社会人となった先輩だから語れる本音で助言をもらっています。卒業生によって組織される院友経済会と経済学部が連携して学生も院友も共に学べる場を広げたいと思っています。院友にキャリア教育を学んだり、後輩と一つのテーマで議論できる場を作ったり、「卒業後も学べる経済学部」としたいですね。

ポイント5 学びの成果を「カタチ」に 現状では学部全体の5、6割の学生がゼミに所属し、そのうち7割(全体の3分の1)しか提出していない卒業論文。それを「学びの締めくくり」として重視する方向となります。ゼミに入ったら卒業論文が必修で、ゼミに入らない場合でも卒業リポートの提出が必ず求められます。自分の学びの成果を提出することが義務づけられるのです。

 これまでは124単位取れば、中身を分かっていようと分かっていまいと卒業できましたが、成果物の提出が求められるようになることで、学部での学びがしっかりと身につく効果が期待されます。自分の主体性の証しとして提出する成果物はどんなものになるのでしょう? 楽しみです。

 

 

 

橋元 秀一

研究分野

労働経済学、社会政策、労務管理論、日本経済論

論文

書評 青木宏之 著『日本の経営・労働システム─鉄鋼業における歴史的展開』(2022/12/25)

組合員の個別賃金決定に労働組合はどう関わっているのか(2020/09/01)

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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