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古事記に登場する個性豊かな動物たち

古事記の不思議を探る

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研究開発推進機構 教授 平藤 喜久子

2019年12月3日更新

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奈良・春日大社の鹿

 神話の主役はもちろん神や英雄です。ですが、日本神話には彼らに負けないほどの活躍をみせる個性豊かな動物たちがたくさん登場します。そんな動物たちの物語を読み解いていくと、古代の日本人がどのような動物と暮らし、彼らにどのような感情を持っていたのかを知る手がかりが得られます。そこから古代日本人と自然との関わりについても考えることができるでしょう。

 たとえば神話のなかには鹿の話がいくつもあります。天の神のお使いとして重要な役割を果たす鹿もいれば、夢をみる浮気者の鹿が登場する話もあります。稲の苗を食べて叱られ、自分だけでなく子孫の鹿たちも決して田を荒らしませんと誓う鹿も登場します。今の日本では、鹿をあちらこちらで見かけることはありませんが、古代の日本人にとって鹿はとても身近な存在だったのでしょう。作物を荒らす害獣でもありました。一夫多妻であるといった鹿の生態も知っていたからこそ、浮気をする鹿の話も生まれたのかもしれません。

 また、蛇が登場する話も数多くみられます。巨大な怖ろしい姿で現れ、人々を困らせるヤマタノオロチのような蛇もいれば、神が蛇の姿で現れる話もあります。蛇との結婚の話もあります。垂仁天皇の皇子ホムチワケは、美女だと思って結婚した初恋の相手の姿を夜中にのぞき見ます。すると彼女は蛇の姿だったので、ホムチワケは逃げ出してしまいました。

 孝霊天皇の皇女ヤマトトビモモソヒメは、夜にしか現れない夫に、姿を見たいと頼みます。驚かないことを条件に、朝、顔を合わせると、夫は小さな美しい蛇でした。ヤマトトビモモソヒメは思わず驚いて声を上げ、そのことに怒った夫は、立ち去ってしまいます。この夫は三輪山の神でした。動物と人間の結婚が、相手の本当の姿を見たために破綻するという話は、日本だけではなく多くの地域の神話や民話に見ることができます。なぜこのような話が語られるのか。動物たちの神話がわたしたちに投げかける謎は尽きません。

 次回からは日本の神話で活躍する動物たちの神話を取り上げていきます。ワニ(サメのことといわれる)をだまして、毛皮を剥がされ、大けがを負ったにも関わらず、けがが癒えたとたんに予言の神となったウサギ。アマテラスの子孫を大和へと導くカラス。八つの頭と八つの尾を持つ巨大なヘビ。そして神の使いとして活躍する鹿。彼らの謎に取り組みながら、日本神話の世界のさらに奥へと進んでいきましょう。

平藤 喜久子

研究分野

神話学 宗教学 宗教史

論文

”史”から”話”へ―日本神話学の夜明け(2018/03/01)

しあわせの神話学(2018/01/01)

このページに対するお問い合せ先: 総合企画部広報課

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