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日本の神話には、多くの神々が登場しますが、なかには優れた知恵で神々のご意見番のような役割を果たす神もいます。
奇想天外な方法で天の岩屋を開く
その知恵の神とは、オモイカネといいます。アマテラスがスサノオの乱暴に恐れをなして天の岩屋に籠もってしまったとき、高天原も地上も真っ暗になり、さまざまな災いが起こりました。神々は天の安の河原に集まり、オモイカネの知恵を頼ることにします。オモイカネは岩屋の前で鶏を鳴かせたり、鏡や玉を作らせて祭を行うことにします。そしてアメノウズメが裸で踊り、神々が大笑いをしたことをきっかけに、アマテラスは岩屋の戸を開き、外に出てくることになりました。オモイカネは世界のピンチを知恵で救ったことになります。
また、アマテラスが地上のオオクニヌシに対して、葦原中国を譲ることを求める使者を選ぶときにも活躍します。この使者選びは、2度失敗してしまいますが、3度目にオモイカネの進言どおり、タケミカヅチを使者とすると、停滞していた交渉はまとまり、オオクニヌシは葦原中国を譲ることになります。
アマテラスが信頼する最高のブレーン
オモイカネという名は、多くの神々の思いを兼ね合わせるという意味と考えられます。多くの神々の知恵を代表するような神ということでしょう。アマテラスは、そんなオモイカネをホノニニギが地上に降る際に、同行させることにします。オモイカネは最高神アマテラスが支配を行っていく上で、とても頼りにしていた神です。その腹心の神を、孫のために地上に降らせ、地上世界の運営が上手くいくようにしたのです。
最高神とされる神であっても、失敗もするし、困ったときには他の神を頼ったりもする、というと不思議な感じがするかもしれません。それは、日本人が神Kami=godまたはdeityという言葉に、一神教のKami=The Godのイメージも重ね合わせているからだと思います。
ユダヤ教やキリスト教などの一神教では、神は唯一であり、全知全能であるとされます。ですから、ヘブライ語聖書(旧約聖書)にも新約聖書にも、神が困ったことがあったからといって誰か別の神や知恵のある人に相談する、といった話はありません。最高神にも頼られる知恵の神の存在は、多神教の神話ならではといっていいでしょう。
2019年9月18日付け、The Japan News掲載広告から