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出雲Vを後押し もう一つの快挙

陸上競技部員が台風19号被災地で復旧ボランティア

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2019年11月21日更新

 10月の出雲駅伝で國學院大學史上初の優勝、11月の全日本大学駅伝では総合7位入賞でシード獲得と、國學院大學陸上競技部の快進撃が止まりません。代表に選ばれた各選手の精進もさることながら、活躍の土台には選手一人一人の「心の成長」があったようです。出雲駅伝の直前に東日本を直撃した台風19号で浸水被害を受けた川崎市高津区を練習拠点とする陸上競技部の部員が、「応援などで支えてくれる地元への恩返し」として復旧ボランティアに従事。地元からも「涙が出るほどありがたい」と感謝されているのです。他人を思う「奉仕の心」を身につけた選手のもう一つの快挙を前田康弘監督ら指導陣も喜んでいます。

台風一過、道路や民家の泥をかき出す陸上競技部員=10月13日、川崎市高津区(「シンクリエイティブ」鈴木昭徳社長提供)

一面、泥の海に衝撃

 陸上競技部は、東急・二子新地駅の近辺の川崎市高津区に合宿所を設け、長距離チーム約60人が寮生活を送っています。台風19号が襲来した10月12日は、大学三大駅伝の初戦・出雲駅伝出場のため島根県に遠征していた前田監督から「合宿所に全員が集合して待期せよ」との指示が出され、留守部隊の約50人がニュースなどで情報を得ながら一夜を過ごしたといいます。
 台風一過、合宿所や部員に被害はなかったものの、街は多摩川水系の氾濫(はんらん)で一変。通学や練習への行き来で通る道路や民家が浸水し、水が引いたところは一面の泥の海と化していたそうです。惨状を目の当たりにした小賀悠人さん(神文4)は、「本当の災害に直面したのは初めて。『何とかしなくては』と思いました」と復旧の手伝いを思い立ったそうです。無料通話アプリ「LINE」を使って「都合の付く部員は手伝って」と呼びかけたところ、十数人が応じてくれました。

率先して作業、最長9時間の活動も

 親族に院友がいることで同部つながりのある不動産会社「シンクリエイティブ」の鈴木昭徳社長が現地に到着した翌13日午前7時ごろで、小賀さんらは既に手分けして作業を展開中していたそうです。鈴木社長は「被災をした皆が暗く落ち込んでいるなか、若い人が自らの意思で積極的に一生懸命ボランティアに従事してくれる姿を見ていると本当に涙が出てきました。『ああ、これが日本の若者なんだ』と。現場にいるすべての人に勇気と元気ももらえました」と絶賛。さらに、「正月の箱根駅伝では川崎市を通るコースを國學院大學の選手が走ります。(現場からは)かなり離れていますが、地元から応援に行く人も増えるはず」と力強く語ってくれました。
 早朝からの作業は数時間に及び、中には夕方まで9時間も活動した部員もいたといいます。作業後に全員が集まることもありませんでしたが、「地元への恩返しは当たり前。でも、部員の表情は満足げでした」と小賀さん。選手を支える主務の三重悠晟さん(健体4)は「LINEで『何かやってるな』と気づきましたが、とにかく出雲のレース直前で、留守部隊が本当にボランティアをしたのかは確認できませんでした。レース後に本当に活動したことを知り、チームメートとして誇りに思います」と小賀さんらの行動を讃えます。

 

みんなの思いをのせ・・・それが駅伝

 前田監督は「普段から『周辺を練習に使わせてもらっているのだから、地域貢献しなさい』とは伝えていますが、実際に動いてくれるとは驚きです。チームとして成長した証しで、出雲駅伝優勝に勝るとも劣らないことです」と2つの快挙を喜ぶ。同部の茂木栄部長(神道文化学部教授)も「試合に出られず悔しい思いをした仲間が地域に貢献したことは、優勝への後押しになったと思います。自分だけのために走るのではなく、みんなの思いをのせて走るのが駅伝だと痛感しました」と話しています。

災害ボランティアの心得

 阪神・淡路大震災や東日本大震災といった巨大災害以降、被災地で復旧を手助けする災害ボランティアに注目が集まっています。近年の異常気象によって日本各地でこれまでにない自然災害が発生し、本学の陸上競技部のように率先して活動するニュースも報じられるようになりました。今回の場合、水が引いてからの活動でしたので作業に支障もありませんでしたが、災害発生直後など場合によっては危険を伴うケースもあり、2次災害、3次災害を引き起こす恐れもあります。災害ボランティアに参加する場合は、事前に状況を確かめた上で、自分が対応可能な作業に従事するよう心掛ける必要があります。全国社会福祉協議会の公式HPには「ボランティアのみなさんへ」が公開されているので、参考にしてください。

 

 

 

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