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アマテラスの孫のホノニニギは、神々とともに地上へ降るときに、分かれ道で天地を照らす不思議な神に出会いました。アメノウズメが正体を尋ねると、その神は「わたしの名はサルタヒコです。アマテラスの子孫の道案内をするためにやってきました」といいます。サルタヒコが導いたおかげで、神々は無事に地上に降ることができました。神々を導いたサルタヒコは、道案内の神、旅の神ということができるでしょう。
奇妙な風貌の神は悪に目を光らす守護神
サルタヒコは、『日本書紀』によると、鼻がとんでもなく長く、身長もとてつもなく高く、口と尻が赤くなっていて、目は鏡のように光り輝いていたといいます。このなんとも奇妙な姿は、日本で古くから山に住むといわれる天狗のイメージに影響を与えたといわれています。天狗は一般的には、顔が赤く、鼻が長く、団扇や杖を持ち、空を飛ぶと考えられています。この天狗の顔は、神社のお祭りのときに、御神輿の行列の先頭でも見つけることができます。天狗の面を付けた人が先導するのは、サルタヒコが神の乗る神輿の道案内をしていることを意味します。
天地の間の分かれ道に立っていたサルタヒコは、旅の神であるとともに、境界を守る神でもあります。集落に疫病や悪人などの「悪」が入らないようにするため、大きな光る目、大きな体で守る必要があると考えられたのかもしれません。サルタヒコの不思議な姿は、目立った姿で先導するというだけでなく、他を圧倒して「悪」を寄せ付けないためでもあるのです。
サルタヒコの「サル」は猿なのか?
サルタヒコという名は、動物のサルと関わるともいわれます。口と尻が赤いことも、サルを連想させます。サルの姿の神というと、インド神話の神で孫悟空のモデルになったとされるハヌマーンがいます。空を飛び怪力を持つハヌマーンが悪者を倒す話は、広くアジア地域で大人気です。孫悟空は、三蔵法師とともに天竺に経典をもらいに行く旅で有名。孫悟空の活躍で、一行は困難に打ち勝ち、経典を得ることに成功します。昔話の「桃太郎」でも、鬼退治の旅のお供にサルがいます。サルは人間に似ていますが、人間にはない不思議な能力があると考えられていました。その能力が見知らぬ土地への旅に必要だと思われたのかもしれません。
~國學院大學は平成28年度文部科学省私立大学研究ブランディング事業に「『古事記学』の推進拠点形成」として選定されています。~
2019年8月26日付け、The Japan News掲載広告から