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大嘗会の秘儀を知る

『大嘗会神膳秘説』

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神道文化学部 准教授 加瀬 直弥

2019年10月22日更新

『大嘗会供神膳秘説』國學院大學図書館所蔵

 大嘗会の供膳、つまり神への食のもてなしの際の作法に関する「秘説」が記されている。後鳥羽院の建暦2(1212)年の日記の一部を抜き書き編集した体裁を取る。同年は院の子である順徳天皇の大嘗会が行われた年であり、院が天皇に秘説の一部を伝授した旨も記されている。永仁6(1298)年の奥書を記す本学所蔵品は、伏見院(後鳥羽院の玄孫)書写とされる宮内庁書陵部蔵伏見宮本と同系統である。

 同記の示す大嘗会の供膳の「秘説」とは、天皇による神への祈りの文言や、配膳法の優越判断である。後者で他説を完全排除していないのは、当時多くあった、幼少の天皇を摂政が補佐して行う供膳を考慮に置いたためである。この場合、同記で次説とされた配膳法に基づいていたようである。「秘説」は、半世紀ぶりに摂政不在の親祭を行う順徳天皇の供膳の権威付けのためにわざわざ明記された可能性が高い。

 同記には、「供膳作法に秘儀のある点を示した、最も古い周知の記録」という特色もある。しかも記主後鳥羽院は供膳を行っている。大嘗会の秘儀が何であるかを知るための基本史料として位置づけられ、事実、後代尊重された。学報連載コラム「未来へつなぐ学術資産研究ノート」(第5回)

 

 

 

加瀬 直弥

研究分野

神道史

論文

「八百万の神の祓の効用と、その受容―平安時代中期までの百官大祓を中心に―」(2024/03/31)

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