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垂直統合型と水平分業型とではどちらが優れているのか?

最適なビジネスモデルを選択するには背後にあるロジックを見抜け!

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経済学部助教 藤山 圭

2017年3月6日更新

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社運を懸けたビジネスモデルの選択。目の前の現実をいかに分析して最適な解を出すのか。経営者として、事業担当者として、社員の生活をも左右するぎりぎりの局面に立たされたときに、私達はどのような根拠で判断を下し事業の舵を切れば良いのでしょうか。現実は多様で常に同じ事は起きません。現実を抽象化して見つめるようにしなければ、膨大な情報に押しつぶされてしまいます。

今回ご紹介したいことは、経営理論やフレームワークを眼鏡として使い、現実を分類し解釈していくための手法です。より実践的な内容にするために、「垂直統合型と水平分業型(外部発注型)との選択」をケースとして取り扱い、皆さまと一緒に考えながら進めていければと願っています。

垂直統合型と聞くと、多くの方がシャープ社の亀山モデルを思い浮かべるのではないでしょうか。液晶テレビの開発から生産、販売と、川上から川下まで一社が統合して行うビジネスモデルです。最近ではハードウェアを作っている企業がソフトウェアやデバイスまで作るのも垂直統合型と呼ばれています。亀山モデルの例でいえば、シャープ社は主要デバイスである液晶パネルも製造しています。一方で、水平分業型というとアップル社。スマートフォンやタブレットの開発機能やOSと一部のソフトはアップル社が統合していますが、生産はEMSを利用しており、デバイスの多くは日本の中小企業が開発・生産していると言われています。

近年、シャープ社の衰退をうけて「垂直統合型は時代遅れだ、水平分業型だ」とか、「いやむしろ時代は垂直統合型に向かっている」などの議論が交わされています。果たしてどちらのビジネスモデルが良いのか。皆さんが経営者や事業担当者だったらどのように考え、判断を下していくでしょうか。

一つ事例を挙げてみましょう。近年アクションカメラというマーケットが誕生しました。創ったのはアメリカのGoPro社の設立者兼CEOであるニコラス・ウッドマンです。サーファーがカメラを付けて撮影をしていたことをヒントに、サーファー目線でダイナミックに撮影できるカメラを開発して売り出しました。GoProと名付けられた小型カメラは、アクションカメラ市場ではシェア1位を取り、ビデオカメラという大きくくくった分野でも最大20%のシェアを占めるまでに成長しました。主要デバイスはソニーなどから調達し、生産はファブレスで行っているので、水平分業型といえるでしょう。

ビデオカメラ市場ではソニー社やパナソニック社などが圧倒的な技術力と知名度を誇っています。強豪ひしめくなか、GoPro社は数年で力をつけてきたのですから、水平分業型は強いとの印象を持たれるのではないでしょうか。しかし現在は、垂直統合型であるソニー社やパナソニック社などに押されているようです。自社で統合するのが良いのか外部に委託するのが良いのか。現実を見ているだけでは判断が下せません。

次回は経営学者であり、『イノベーションのジレンマ』著者である、クレイトン・クリステンセンの議論やフレームワークを使いながら、現実をどのように整理していけば良いのかについて皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

 

 

 

藤山 圭

研究分野

経営戦略論・イノベーションマネジメント

論文

「イノベーターは誰かーデジタル・プロジェクターの普及プロセスを事例としてー」(2019/03/25)

「VPFビジネス・スキームに関する論点の整理」(2018/01/25)

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