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「イノベーションのジレンマ」で垂直統合型と水平分業型を解釈する

最適なビジネスモデルを選択するには背後にあるロジックを見抜け!

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経済学部助教 藤山 圭

2017年3月6日更新

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ビジネスモデルの選択に迫られた際に、経営理論やフレームワークをいかに眼鏡として使い、現実を分類し解釈していくか。今回はアメリカの経営学者であり、『イノベーションのジレンマ』著者である、クレイトン・クリステンセンの議論を説明しながらアプローチ方法を考えていきたいと思います。

横軸は時間、縦軸は性能です。点線は消費者が求める性能水準になります。点線(a)は大満足であり、これ以上になると性能の差が認知できないレベル、点線(b)は購入するのに最低限必要なレベルです。学習に伴い消費者が求める性能は上がっていきますが、技術は消費者の学習スピードよりも速く進歩するので、技術AとBの傾きはこのようになります。技術は時間の経過に伴い消費者の欲求を満たすだけではなく超えていくことがわかると思います。
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イノベーションのジレンマというのは、持続的技術Aをやっている企業にとっては、次の破壊的技術Bの進出には対応できないという議論になります。Bは、技術的には劣りますがAにはない性能軸を持っており、時間の経過により点線(b)まで上がってきます。例えば、スーパーコンピューターのような機器(業務用ミニコン)が全盛の時代にパーソナルコンピュータが出てきました。処理速度は比較にならないほど遅かったのですが、小さくて安いという性能軸を持っていました。今ではどうでしょう。時間とともに性能が上がり一大市場となっています。しかし当時のAをやっている企業からは、チープな技術過ぎて見向きもされませんでした。仮に将来有望だと気がついていても、自社が参入するにはマーケットが小さすぎて、結局のところ事業として投資できないので、理論的には破壊的技術にはなかなか対応できないという訳です。

このフレームワークを利用して垂直統合型と水平分業型を考えてみましょう。技術がないところから消費者が満足する点線(b)を超えるビデオカメラを作るには、垂直統合型であることが重要になります。消費者のニーズに応えるためには自社内ですりあわせて改善していく必要があるからです。また、完成されていない市場であり技術であるため、外注先もほぼ存在しない状況でもあります。しかし、点線(b)を超え、さらに(a)を超えるにつれ市場は拡大し、生産に必要な一つ一つのモジュール、カメラであればレンズやセンサー、防塵(じん)防水のためのシーリング技術などの生産に特化した企業が出てくることになります。

さらに、消費者にとって性能の差が認識できない点線(a)を超えてしまえば、満足を追究するために最適な垂直統合型である必要はありません。生産は外部に委託する水平分業型にして、その分商品企画や研究開発などにリソースを集中するという選択肢が生まれてきます。クリステンセンも垂直統合を考えるうえで、このフレームワークを使って「消費者の求めている性能水準が十分だったら外注した方が良い、不十分であれば垂直統合した方が良い」と説明しています。

次回はクリステンセンのフレームワークを使って垂直統合型と水平分業型の事例を解釈してみたいと思います。

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