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陸上部はいま充実している。
山口祥太・陸上競技部コーチが見るチームの今。 (後編)

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陸上競技部コーチ 山口 祥太

2019年9月17日更新

 箱根駅伝で常連校になりつつあった時代の國學院大學陸上競技部を支え、その後は富士通で10年間の現役生活。平成30(2018)年5月、“恩返し”のために母校へ戻ってきたのが、山口祥太・陸上競技部コーチだ。自身の歩みを語った前編に続き、この後編では、2019/20年シーズンへ向けた展望を語ってもらった。
 今年も10月の出雲駅伝に始まり、11月の全日本大学駅伝、そして前回総合7位の好成績を収めた1月の箱根駅伝と、大学三大駅伝が待ち受けている。選手たちに大きな期待を寄せる山口コーチの言葉からは、部全体に満ちている充実感が伝わってくる。

 

―コーチ就任の前月に、主将の土方英和選手が、山口さんがマークしていた10000mの大学記録を塗り替えたことを前編のラストで伺いました。

山口祥太コーチ(以下、山口):その前の代の頃から、力は蓄えられていたんです。実は私は、富士通での現役生活から引退する前年、平成29(2017)年の夏に、長野県の蓼科で行われた國學院大學陸上競技部の合宿に参加させてもらっていました。その時の主将は、向晃平選手(現・マツダ)だったのですが、その当時のチームと一緒に練習する中で、「すごくまとまりのあって、いいチームだな、この子たちの力になりたいな」と感じていたんです。
 残念ながらそのシーズンでの箱根駅伝ではシード権を取ることはできませんでしたが(総合14位)、実力があるということは練習を共にした経験からわかっていましたし、前田康弘監督、石川昌伸コーチも、手ごたえを掴みながらそのシーズンを終えたことと思います。
 私がチームに合流した時には、そのようにきちんとした基盤ができている状況がありました。2019年1月の箱根駅伝でのシード権獲得は、こうした積み重ねの上で生まれたものなんです。

―テレビ放送された密着映像では、前田監督の口から「これでいよいよ往路優勝が見えてきた」といった旨の発言があり、そもそも高い目標を掲げて臨んだ大会であることがわかります。

山口:そうですね。そしてその後も、5月に行われた関東インカレで4年生の選手たちが結果を出しているんです。


―関東インカレ2部男子ハーフマラソンで土方選手が大学史上初の優勝。同5000mと10000mでは、箱根駅伝5区で区間新を記録し“山の神”と称された浦野雄平選手が日本人勢トップとなりました。トラックでも記録が出ているのが素晴らしいですね。

山口:土方・浦野の両選手にかんしては、レースがどんな流れになっても、どんな状況にあっても力を発揮できる、という強みを各大会で出していますね。決して慢心してはいけないですが、信頼のおける選手たちですし、安心して見ていることができます。

―そこからメンバー全体の“厚み”を出していければ、今の代からさらに次のシーズンへとつながっていきますね。

山口:まさにそこが、コーチとしての腕の見せ所になってくると思います。土方や浦野といった選手が部にいる間に、彼らの考えや思いをどれだけチーム全体に浸透させられるか。ふたりはすごく勤勉かつ真面目で、チームにいい影響を与えてくれる選手たちですので、彼らを目標にすれば近づけるんだ、という話をコーチとしてもすることができます。
 ふたりも入部当初は、決して速いタイムを持っていた選手たちではないんです。やるべきことをしっかりやってきた結果が今なんだ、と私は伝えていかなければいけません。他の選手たち、下の世代も、自分たちとふたりは違う、と思うのではなく、どこまで意識を引き上げられるかが勝負です。ふたりも、最初から成果を出せていたわけではない。今から準備していくんだ、ということをいかに意識できるか、ですね。

―おっしゃる通り、まさに腕の見せ所ですね。

山口:箱根駅伝で走ることができればいいや、と思っている選手と、チーム全体を考えて総合で高順位を狙おうと思っている選手では、毎日練習していく過程そのものが変わってきます。チームとして目標としている地点のために、自分は何をやっていかなきゃいけないのかということを、さらにしっかり考えてもらえるようにしていきたいですね。

―楽しみにしています。最後に、コーチに就任して1年あまりの間、コーチとしてやりがいを感じた瞬間があったら聞かせていただけますか。

山口:個々の選手が自己記録を更新できた時は、とても嬉しいです。チーム全体でいえば、平成30(2018)年11月の全日本大学駅伝の時のことです。総合6位に入り、初めてシード権を獲得できたのですが、7区の土方選手から、8区アンカーの長谷勇汰選手へと襷をつなぐ最後の中継所が私の担当だったんですね。
 土方選手がリードを広げてきていることは伝達されていたんですが、中継所で待つ長谷選手も、そして私自身も緊張していて。私から「一緒に深呼吸しよう」といって、ふたりで深呼吸しながら待っていました(笑)。「ゆっくりいこう、落ち着いて走れば大丈夫だから」と。


―山口さんも一緒に深呼吸していたんですね(笑)。

山口:富士通時代にお世話になったコーチにやってもらっていたことなんですが、この全日本以来、私も選手と一緒に深呼吸するようになりました(笑)。

――そして、コーチ冥利に尽きる瞬間が訪れた、と。

山口:長谷選手が走り出し、交通規制が解けた後に、私はひとり、車で後からゴール地点の伊勢へと向かいました。その途中で、車内で聞いていた放送から、6位でフィニッシュという瞬間が伝えられて……車の中で思わず、ひとりでガッツポーズしましたね(笑)。
溜 まっていた疲れも何もかも、すべて吹っ飛びました。コーチとしてその瞬間は、本当に嬉しいものだったんです――。

 

 

 

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