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日本最古の書物『古事記』。世界のはじまりから神様の出現、皇位の継承まで、日本の成り立ちがドラマチックに描かれています。それぞれの印象的なエピソードには今日でも解明されていない「不思議」がたくさん潜んでいます。その1つ1つを探ることで、日本の信仰や文化のはじまりについて考えていきます。
日本には「八百万の神」という言い方があります。「八」は数が多いことを示すので、数えきれないほどたくさんの神々がいるという意味でしょう。神話を伝える日本最古の歴史書である『古事記』にも、個性あふれる多くの神々や英雄たちが登場し、それぞれに得意とする能力を発揮して活躍しています。
戦いの神、作物の実りを司る神、道案内の神、病気を治す神などなど能力はさまざま。能力という観点から広く世界の神話に目を向けてみると、似た特徴を持つ神々たちがいることに気がつきます。
強力なアイテムを持った神や英雄
たとえば、ヤマトタケルは三種の神器の一つでもある草薙剣という武器を手に、東国を平定していく英雄です。剣を持って戦う英雄というと、名剣エクスカリバーを持つアーサー王を思い浮かべる人も多いのでは。神や英雄にはその代名詞ともなるような武器を持つ者が少なくありません。日本のヤマトタケルをそうした武器を使って戦う世界の神、英雄と比較すると、ヤマトタケルの戦いの神としての特徴などが浮かび上がってくるでしょう。
このように複数の神や神話を比較して研究する神話学という学問があります。神話学は神話を比較することで、その神話を持つ文化の特徴や、人々の世界観について考えたり、さらに複数の神話にみられる共通点から、人類の移動の過程を推測したり、人類に普遍的な思考、観念などについて考察したりします。
個性豊かな古事記の神々から世界観を探る
次回からは、この神話学の立場から「武」、「食」、「旅」、「知」、「医」というキーワードに関わる神々を紹介していきます。「武」では、さきほども取り上げたヤマトタケル。「食」では、伊勢神宮の外宮にもお祀りされているトヨウケ。「旅」では、神々を案内する役割をしたサルタヒコ。「知」では、神々の世界きっての知恵者オモイカネ。「医」では、温泉にもゆかりの深いスクナヒコナ。
こうした個性豊かな能力を持つ『古事記』の神々を世界の神々と比べることで、古代日本の文化の特徴や人々の世界観のありよう、さらに他地域の人々や現代のわたしたちとも共通する感性などを発見できるかもしれません。
~國學院大學は平成28年度文部科学省私立大学研究ブランディング事業に「『古事記学』の推進拠点形成」として選定されています。~