「これはなに?」とか、「なんで?」と、子どもに聞かれることがあります。このときみなさんは、どのように返答されているでしょうか。子どもに毎日何回も質問され、時には面倒に思うこともあるかもしれません。しかし、私たち大人が、どのように子どもの疑問に答え、子どもに「疑問をもたせる環境」をつくるかによって、子どもの育ちが変わってくるのです。
以前、私は小学校で理科を重視しながら教壇に立っていました。小学生は、幼児期と比べると自分から「なんで?」と聞いてくることは少なくなります。そこで、この時期の子どもたちにいろいろなものに興味・関心をもってもらうために「疑問をもたせる環境」をつくってきました。
例えば、子どもと桜の木を観察し、次の写真のような葉を探します。そして、「どうして、葉っぱの右と左に同じような虫食いのあとがあるのかな」と聞いてみます。すると「首を振って食べているのではないか」とか、「葉っぱのおいしいところだけを食べている」など、様々な考えを出してくれます。
実は、虫がこの葉を食べたのは、葉が出始めた時期。この頃の葉は二つに折れていますが、それが大きくなり、折れていた葉が広がることで、虫食いのあとが二カ所になった、というのが答えになります。
このように、日常にある桜の葉でも、よく見てみると疑問がわいてくる「教材」となります。そして、大人が意図的に「疑問をもたせる環境」をつくることで、子どもの知的好奇心や思考力を高めることができるのです。
子どもたちの疑問は、私たち大人にとっては、たわいないものかもしれません。しかし、ここで意識したいことは、「わからないから質問している」ということであり、子どもにとって大切な学習の機会であるということなのです。つまり、「子ども目線」と「親目線」は違うため、子どもの目線に立って、疑問には(親自身もわからないことを含めて)できるだけ応えてあげて、多くのことを意識的に注目させ、触れさせることが大切なのです。
寺本 貴啓
研究分野
理科教育学、学習科学、教育方法学
論文
新学習指導要領における小学校理科の評価の在り方と指導に関する一考察-新しい観点別学習状況の評価で指導がどのように変わるのか-(2021/03/01)
1B2-A26 小学校第6学年「電気の利用」単元の発熱教材の条件に関する研究 : 短時間で大きな温度差が出るよりわかりやすい実験条件とは(インタラクティブセッション,学びの原点への回帰-イノベーティブ人材育成のための科学教育研究-)(2014/09/13)