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生涯学び続ける礎を。自ら考え、耕す人間に

新学部長が語る「人間開発」の理念

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人間開発学部長 成田 信子

2019年5月15日更新

 学部開設から10年を経た國學院大學人間開発学部は横浜・たまプラーザにキャンパスを構え、初等教育、健康体育、子ども支援の3学科から教育界を中心に多彩な人材を世に送り出しています。新たな10年が始まる節目の年に着任した成田信子学部長は「これからの時代は生涯学び続けることが求められます。本学部の学びの中から、その礎となるものを身につけてもらいたい」と訴えます。「いじめ」「教育格差」など多くの問題を抱える教育界で、難問に直面する人間を育てるにはどうしたらよいのか? 成田学部長に〝舵取り〟の心構えをお聞きしました。

広い視野を持つ「人作りのプロ」育成

 「人間開発」という言葉には、「人が持つ力や可能性を引き出し、伸ばしていく」という理念が込められています。「教育」とは「教え」「育てる」ことですが、それ以前に人間が潜在的に持つ力を引き出すことが基盤にあります。学部教員など外側の者が教え育てるだけではなく、学生自身が自分の持っている力に気づいて大事にすることが重要で、それが私たちの掲げる「教育の前に人間開発あり」に通じます。

 私は、小学校教員として24年間教鞭を執りました。その後、大学の教員として関西の大学で3年、本学部では立ち上げから10年を過ごしてきました。本学部開設からの歩みを見てきて、新たな10年に向けてやりたいことが2つあります。

 本学部は自立した人間、自立した学習者としての「人作りのプロ」育成を続けています。10年間で巣立った卒業生の中には社会の中堅、いわゆるミドルリーダーとなる世代が出てきているので、これまでの育成の真価が問われるところです。学部の特徴として、学生と教職員との距離が近く、丁寧で親切なプログラム運営ができている影響からか、本学部の学生は一般的な大学生よりジェントルで素直なイメージが見受けられます。自立した人間として自らを伸ばしていける人となる学生を育成することを目標の1つに掲げたいと思います。

 もう1つは「広い視野」。本学部は教員と学生、学生同士、学生と地域社会の子どもや保護者とのつながりを大事にしてきました。人と人との関わりが非常に密になっています。これまで築いてきたさまざまな関わりを大事にしながら、さらに広い視野をもってほしいと期待しています。インターンシップやボランティアに取り組む学生は多く、教育実習に結ぶ成果もあがっていますが、目的が教員採用に合格するといった実利的な面だけではもったいない。人間力育成には、多くの人や社会と関わりを学生が自らつくり出し、視野を広げられるような取り組みを学部としてやっていきたいですね。

課題の多い現場に対処するには

 最近の教育現場はさまざまな課題があり、解決には立場の違う考え方を受け入れ、しかしながら自分の考えをしっかりもつことが求められます。これは、國學院大學が標榜する神道精神を現代的に意義づけした「主体性を保持した寛容性と謙虚さ」に通じます。本学部は2年次に教育インターンシップという科目を置き、3年次で教育実習へ行く前に学校の現場や教師の職務について経験できるようになっています。そこで思い通りにいかない現実を知り、「子どもを叱ることが難しい」と悩む学生もいます。今年度からインターンシップで感じたことを授業と関連づけてフィードバックできるようにしています。事象や経験を積み上げだけでは不十分で、積み上げた中からどう対処したら良いかを探し出す手法を伝えることが、学部教員の務めだと思っています。

 学部を運営するに当って力を入れたい点は、「自ら考える力の育成」です。本学部では1年次に「導入基礎演習」があります。大学での学びの入口に当たるもので非常に間口が広く、例えば書き表し方とか発表の仕方といったものを学びます。それに加え、今年度から「専門基礎演習」という授業を作りました。専門基礎演習では、初等教育、健康体育、子ども支援の3学科の専門領域に関わる授業を、1年の後期に演習形式で学んでもらいます。それを通じて、少し自分で学ぶことを経験させようと考えているのです。2年では教職科目がたくさん入っているので、実践的な科目も含めて自分の専門を耕していくような学びを用意しています。3年でゼミが始まり、4年で卒業論文となるのが本学での学びの流れになります。学部の特色として、卒論は3学科の専門領域からどれをテーマとしても構わないシステムになっています。「人間開発」という大きなくくりの中で、自分が最も興味・関心を持ったテーマを自ら選んで1年かけて仕上げるというところが、「自立」になるのです。学んだ理論を関心のある分野のテーマや実践と結び付けて深く考える力を育成したいと考えています。

状況に応じアウトプットする技法を

 日本の教育現場は先生が特別な職にある人として尊敬されてきた歴史と現代社会の在り方がうまく接続できないままになり、きちんとした人間同士のつながりを生み出せていない感じがします。学校と家庭が責任を押しつけあっていては、子どもがかわいそうなだけ。これからの学生には、そのような社会の現状も知ったうえで教育を学んでもらいたいですね。

 教育学関係の学修は学ぶことが多いのですが、実習系の科目はインターンシップから教育実習へつながるようになっています。これは、本学部が目指す「自立した学習者の育成」に実習が欠かせないから。仕事として教職を選ばないにしても、人間開発学部で「人を育てる」基本を学んだことを広く社会で生かしてほしいと願っています。教員となって多くの人に教えたり、企業人として他者と関わって成果を上げる時に、自分が持っている力をどう発揮するかを考えると、蓄えた知識や技能をさまざまな状況に応じてアウトプットすることが必要になってはずです。そうなると、答えが一通りではない実習系科目を始めとした臨床について考える科目の重要さが見えてくることでしょう。

 これからの時代には、教員に限らず人は一生学び続けることが求められます。他者との関わりでも、言葉と文化との関わりでも、日本が直面している外国と関わりにしても、他に学ぼうとする姿勢とそれに基づいた深い思索が次の展望を開きます。その礎を本学部で学ぶ4年間で培ってほしいと願っています。(談)

 

 

 

成田 信子

研究分野

国語教育

論文

文学を読み合うことで子どもの中に生まれるもの(2019/10/10)

リデザインで追究する文学の授業づくり ―登場人物との対話がもたらしたもの―(2016/03/04)

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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