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法律の丸暗記ではなく、考える学修を

法学部長が語る「多様な意見に触れ、社会で活きるスキルを学ぶ」意義

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法学部長 一木 孝之

2019年5月14日更新

 絶えず変化し続ける現代社会の中で、より生活しやすい環境をつくっていくために必要不可欠な法律というルール。國學院大學法学部では、時代のニーズに対応する法の知識を身につけてもらうことはもちろん、その基礎として、社会で活躍し、より良い社会の形成に積極的に関わることのできるスキルを持った人材育成を目指しています。今年度着任した一木孝之学部長は「法学部で学ぶ上での一番の財産は、客観的な立場で物事を考えるという方向性を身につけてもらうこと」と語ります。グローバル化、多様化が進む今の社会に求められる人材を育成する教育とは? 一木学部長に、その展望を伺いました。

4年間の学びで将来を発見

 入学時に、法学部がどのような学びの場なのかということをしっかりイメージできる学生や、法律や政治を学んだ上で将来どのような道に進むのかはっきり決めている学生は、あまり多くないのではないかと思います。本学部は、「法律専攻」「法律専門職専攻」「政治専攻」という3つの専攻を設け、学生の目標や関心に合わせた教育を行っています。

 「法律専攻」は一学年400人規模の、いわゆる〝従来型〟の法学部としての学修の場。「法学部で学び、将来いろいろなことをやってみたい」という学生が、主体的に選択しながら勉強し、自分の進路を見つけていくことを目指しています。「法律専門職専攻」「政治専攻」はそれぞれ一学年約50人の少人数制で、入学当初からある程度具体的な目標を持つ学生に向けた教育を行っています。例えば、法律専門職専攻では、司法試験や公務員試験などに向けて早い段階から演習を取り入れていますが、少人数の授業なので、学生のリアクションを教員が確認しやすく、学生と教員の議論などを含め双方向の学修が可能となっています。

 本学部は平成30年度から、法律専攻の入門科目を1年生の前期に置いて、まずは法学部で求められる姿勢や考え方を理解できるようにしています。また、大人数授業の課題を解消するため、70~80人規模の中人数をさらにグループに分け、議論や教員との対話などのコミュニケーションを取りながら進める授業を取り入れたり、通年の授業を前後期で区切り、その都度学生たちの学習の進み具合を確認できるようセメスター(2学期)制を導入したりして、より良い学びの場となるよう改革を進めてきました。これらの初年次教育の成果として、「法律の学修というのは知識の押しつけではなく、議論しながら考える必要があるものだ」という意識が学生の中に出てきたなと感じているところです。

「知識の暗記」よりも「議論」の教育

 4年間の学びの中で、「条文を丸暗記するのか」「法律に当てはめれば正解がでるのか」というような法学部への誤解も解かなければなりません。大前提として、法律も政治も社会の仕組みから切り離すことはできません。社会において問題が生じたとき、感情で白黒つけるということがありがちですが、本学部で第一に学んでもらいたいことは「意見は多様である」ということです。複数の見方があるときに、「自分の意見こそ正しい」とこだわるのではなく、「まずは相手の意見を聞いてみよう」と対話の姿勢をもつことが重要です。その上で、「相手との歩み寄りが可能か」あるいは「どうすれば自分の意見を相手に納得してもらえるのか」を考える必要があります。その際に議論が平行線をたどることを避けるうえで、法律や政治の知識が意味をもってくるのです。さらに議論を進めるうちに、法律や政治という既存のルールは本当に正しいと言えるのか、という点についてを考えることも大切になりますね。「対話」「説得」というスキル、そして「本当に正しいのか」「違う考え方もできるのではないか」というところから物事を検討する姿勢こそ、本学部で学ぶ最大の意義であり、これらが身につくと、社会のどの分野でも活躍できる人材になるのではないかと考えています。

研究の成果 学生に還元を

 近時、大学に対する社会の目は、どうしても「教育」に行きがちです。しかし、その基盤には「研究」があることを忘れてはいけません。私は大学院時代から、「委任」を専門分野として研究を続けてます。民法で決められる「債権」の中に「契約」が分類され、さらに「委任」という分野が存在します。委任というのは、有償・無償契約どちらも含み、「いつでも契約を放棄して良い」という内容のユニークな条文もあるので、民法の中ではマイナーではありますが重要な分野だと感じています。研究を始めて25年以上経ちますが未だに分からないことが多く、面白いと感じられる委任というテーマについて、これからも考え続けていこうと思っています。
 学部長になっても研究や学会への参加は続けていきたいですね。というのも、教員一人ひとりが自分の研究をきちんと形にすることが、大学、学部としての成果や評価につながるのではないでしょうか? 本学部が在学生にとって良い学びの場となり、卒業生が「國學院大學法学部の出身である」ことに誇りを持つことができたらとても嬉しいことです。そのためにも、教員にとっては、研究の成果を教育にフィードバックしていくことが非常に重要なのです。法律や政治を含め、社会というものが絶えず変化し続ける中、自分たちはどのように対応していけば良いのかという意識を持ちながら、教員も学生も考え、学び、研究し、誇れる学部でありたいですね。(談)

 

 

 

一木 孝之

研究分野

民法

論文

委任者に生じた事情と委任の終了可能性 ―契約関係の終点および始点をめぐる研究序説―(2023/03/10)

委任の利他性-委任の解除、ならびに受任者の経済的不利益等の填補をめぐってー(2019/01/26)

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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