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國學院大學考古学研究室が長野県安曇野の穂高古墳群を調査する2

考古学実習レポート 第2回(発掘編)

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2015年10月26日更新

調査参加者の7割を占める“考古女子”の奮闘を4回にわたって紹介します。(第3回は、2月号にて報告いたします)
制作・Newton

ホンモノの古墳を調査する実践授業

2015年8月26日、長野県安曇野市。今年も國學院大學考古学研究室の発掘調査が始まりました。小雨降る穂高古墳群F9号墳に集まったのは総勢40名以上の調査隊。10日間に及ぶ調査作業の中心となるのは「考古学調査法」を受講する実習生約20名です。先生や大学院生、OB、地元の研究者さんらの指導・協力を受けながら発掘調査を進めます。

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穂高古墳群F9号墳の石室内を調査する実習生たち。

実習生の多くはホンモノの古墳に入るのは初体験。最初は緊張気味で、恐る恐るといった様子でしたが、去年の調査後に埋められた土のうが取り除かれ、古墳内部の石室(石でできた埋葬施設)があらわになるころには、みな笑顔になっていました。泥がかかるのも気にせず、作業に没頭している“考古女子”の姿は、若手のりっぱな考古学者のよう。通りがかりの地元の人に質問を受け「古墳時代後期に築造されたとみられる円墳なんです」とスラスラ答える実習生もいました。

石室の調査では、最初に埋葬されたとみられる床面が確認できました。礫(砂利のこと)を敷き詰めた層が出てきたのです。表面を丁寧に掘削し、横に積み上げられた石の表面も慎重に調べていきます。しかし、土にまみれた古代の遺物を見分けるのは容易ではありません。採取した土はその場で慎重に調べたあと、石室の外にいるグループに渡されます。そこではふるいを持った実習生たちが待ち構えており、水をかけて洗いながら、さらに念入りに採取した土を調べていきます。考古女子の「出ました!」の声が上がるたび、大きな歓声が上がりました。

 

 

 

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石室の床から出土した馬具。轡(くつわ)と見られ、最初に埋葬された人物と一緒に置かれた可能性が高い。

馬具が出土! そして古墳の
全貌を知るカギも

調査するのは石室だけではありません。その北側では試掘溝が拡張されました。これは墳丘(古墳全体)の大きさ、カタチを探るためのもの。出土品は多くありませんが、周辺の地層をきちんと調べれば、古墳の全貌を推理することができます。また同時に、授業で練習したレベル(高低差)観測や、トータルステーション(測量機器)をつかって地形図を作成する実習生の姿もありました。最初は先生の指示通りに動いていた彼女たちも、いつしか各自の判断で動くようになっていきます。「発掘はチームプレーが大切なんです」と実習生たちは口々に語っていました。

9月2日には地元の考古ファンを招いての現地説明会を開催。今回の調査を率いる深澤太郎准教授から詳しい説明がありました。石室内からは新たに鉄鏃(鉄製のやじり)、須恵器(土器の一種)、水晶製と見られる切子玉、ガラス小玉などが出土。深澤先生が注目したのは馬具(乗馬に用いる装具)と赤色の顔料が含まれた土です。これから何がわかるのでしょう。「出土品というモノに注目しがちですが、その出土状況から過去の出来事を復元していくことも考古学の醍醐味です」と語る深澤先生の指導のもと、実習生たちは大学にもどり出土品の整理、分析にとりかかります。その様子は改めてお届けいたしますので、お楽しみに。

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現地説明会には、50名をこえる考古学ファンが集まった。調査結果の説明に熱心に聞き入っていた。

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