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理科好きの子どもたちを育てよう!

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人間開発学部初等教育学科教授 猿田祐嗣

2016年8月1日更新

 小学生時代は理科が好きな子どもが多いのですが、小学校の高学年から中学生にかけて、理科嫌いの子どもが増える傾向がみられます。高校では1年生から始まる文系・理系の進路選択で、理数系教科、特に数学の成績で文系・理系の進路選択が決定される傾向があります。つまり理数系教科の成績が悪いと文系に進む高校生が多いということです。文系・理系いずれを選ぶにせよ、まだ高校の内容をあまり学んでいない時期に、進路を決めなければならない状況なのです。

 それに拍車をかけるのが親の中学校や高校時代の苦手意識です。理科や数学の成績が振るわない子どもが理系に進もうとすると待ったをかけがちです。頑張ってみようかなと思っている子どもに対して、「お母さんは数学が苦手だったのよ」とか「理系は数学や理科の成績が良くないと無理」などと言ってしまうと、子どもは悩んでしまいます。

 しかしながら、このような傾向は日本を含む東アジアの国にみられる特徴的なものです。多くの国では子どもが興味や関心を抱く方面に進路を見いだすことが奨励されています。たとえそれまでの成績が振るわなくても、好きな方面の勉強をやってみようとする意欲を応援するのです。結果的に理系の方面に進めなくとも、先回りして子どものやる気を削ぐ必要はありません。

 教科の好き嫌いは遺伝するものではありません。自然に親しみ、自然を体験する活動を一緒に行うことで、子どもたちは自然や科学に目を向け、身近に感じるようになります。

 子どもたちに限らず、従来誇ってきた日本人の器用さ、几帳面さが失われつつあることが危惧されています。また、小さなときに自然の中で遊ぶ経験が不足し、ものづくりや工作をする体験もゲームに奪われています。

 常に不便さの中から新たな物やアイデアが生み出されてきました。必要は発明の母とも言います。便利な生活だけで満足するのではなく、キャンプなどの野外活動で火をおこしたり水を確保したりすることの大変さを経験することが貴重なのです。

 ただ、子どもから「なぜ」「どうして」と問いつめられたらどうしよう、と心配される方も多いでしょう。心配はいりません。答えを一緒にみつけようとすればよいのです。図書館や博物館などでは子ども向けの書物や展示だけでなく、学芸員や最近ではサイエンス・コミュニケーターという理科好きの人々が子どもたちの質問を待ちかまえています。

 成績なんて気にせずに、自然や科学を大いに楽しんで欲しいと思っています。

 

 

 

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