国立歴史民俗博物館と本学研究開発推進センターとの合同研究会「宗教認知科学からみる考古学 ―顔身体象徴を中心に―」が令和7(2025)7月26日に、渋谷キャンパス学術メディアセンター会議室で開催され、オンラインでの参加を含むおよそ60人が聴講しました。
冒頭、松本久史・研究開発推進機構 研究開発推進センター長(本学神道文化学部教授)が「本学研究開発推進センターの「「カミ学」研究拠点の構築」プロジェクトにて、「カミ」が人類文化にどのような影響を与えているか、「カミ」の理論化から社会実装まで研究を進めたいと考えている。今回は国立歴史民俗博物館の共同研究「顔身体土器の通文化比較にみる身体・モノ認識」のプロジェクトとともに、考古学における宗教認知科学の可能性について考え、「「カミ学」研究拠点の構築」プロジェクトに生かしていきたい」と挨拶。続いて、国立歴史民俗博物館准教授で院友の中村耕作氏が、趣旨説明として、同館の共同研究の概要や、顔身体土器について、通年文化比較や変遷、また土偶との違い等について紹介しました。
講演では、藤井修平・研究開発推進機構助教(特別専任)が「神・霊魂をいかに考えるか―宗教認知科学と考古学の連携可能性―」と題して、まず「宗教認知科学」についての概要、更にその理論から考えられる宗教や神概念、霊魂、葬制等について、先行研究をまじえながら丁寧に説明。その上で考古学研究との接点を検証しつつ、また笹生衛・研究開発推進機構長(本学神道文化学部教授)の研究で採用されている認知科学的手法をも紹介しながら、実証的な研究を行う考古学研究における「宗教認知科学」の可能性について論じました。
本講演を受け、2名のコメンテーターが発言し、笹生機構長は宗教認知科学のビッグゴッド理論によって、中世の神や信仰の変遷を検証することができた事例について述べ、岡山大学教授の松本直子氏は、現代人のイメージの地域差を例に、認知科学において普遍的とされることや認知メカニズムを改めて検証する必要があることを指摘しました。これらのコメントを受けつつ、また質疑応答が行われ、国立歴史民俗博物館の共同研究プロジェクトに参画する研究者等とともに活発な議論がなされました。
最後に登壇者やコメンテータからの発言があり、笹生機構長は「研究を進化させるためには、新しい視点が必要。宗教認知科学と考古学と相互に検証を重ねながら、歴史学の精度を高めていきたい」と述べ、引き続き「「カミ学」研究拠点の構築」プロジェクトでの検証を行うと話しました。
笹生 衛
研究分野
日本考古学、日本宗教史
論文
10世紀の気候変動がもたらしたもの―東国の集落と水田の景観変化から―(2024/08/01)
古代末期の気候変動と新たな祭祀・交通の展開(2024/08/01)
藤井 修平
研究分野
宗教学理論研究、宗教心理学、宗教認知科学、科学と宗教、宗教学
論文
The History and Current State of Japanese Zen Buddhism in Europe(2021/07/14)
進化生物学に基づいた宗教的言説の考察―新たな形態の創造論とそれを取り巻く諸理論の現状(2014/03/01)