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人生100年時代の「健康」を考える

スポーツを健康につなげていく

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人間開発学部准教授 林 貢一郎

2018年6月30日更新

 高齢化が進む中、健康で長生きをすることを意識して生活する人が増えている。「どうしたら病気にならずに済むのか?」というテーマは、多くの人にとっての関心事だ。人間開発学部健康体育学科の林貢一郎准教授(運動生理学、健康科学、スポーツ医学)は、スポーツで人を幸せにすることを目指した研究に加え、学生たちと運動教室などを開き、高齢者の健康づくりに貢献する活動も行っている。

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正しい情報発信を

――林准教授は「スポーツで健康に」なることを目指した研究を行っていますが、そのような考えを持つようになったきっかけは何ですか。

林准教授(以下、林) スポーツの研究というと、「人はどうしたら早く走れるようになるのか」といった研究を思い浮かべる人が多いかもしれません。筋肉をより大きくするためのトレーニングだったり、アスリートが最高のパフォーマンスを発揮するためのコンディショニング方法であったり…。そういう話はとても夢があっていいですよね。でも、実際はプロやオリンピック選手を目指す人など、ごく一部の人にしか還元できないものです。もちろん、そのような研究も進んでいますが、今は「どのような運動をしたら健康に寄与するのか」という研究をしている人がとても多いです。私も、大学生のときに医療系の大学の中にある体育、スポーツの学科で学んでいたので、「運動で人を健康にしたい」という意識があり、今の研究につながっています。

――現在の研究についてもう少し詳しく教えて下さい。

林 いろいろな研究をしていますが、広くは、生活習慣病、骨や筋肉といった運動器の機能が低下するロコモティブシンドロームの予防・改善のために運動が有効であるということを実証するための研究がメーンです。その中でも、現在は動脈硬化の研究を進めていて、たまプラ―ザキャンパス周辺に住む方々や、学内の関係者に協力してもらい、運動やサプリメントの効果の個人差について、何が要因となっているのかを調べています。

 また、学科の学生たちと一緒に、地域の方々に向けた運動教室などを開催してきました。教室で行うことは、筋トレ、ストレッチ、ウォーキングなどさまざまです。参加者の体脂肪、筋肉量、動脈硬化指数などを記録させてもらい、健康増進の研究につなげています。参加の声かけも自分たちでやるのですが、高齢の方は健康意識がとても高く、興味を持って積極的に参加してくれます。皆さん、いろいろな情報を集めてどんどん健康になろうとしていますね。最近では、健康に関する情報が世の中にあふれていますが、中には正しくないものもあります。研究により効果を証明し、正しい情報を発信していくことも私たちの大切な役目だと思っています。

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年齢を重ねると「居場所」が必要

 

――日本は長寿大国。高齢化が進む中、「健康」には多くの人が関心を寄せるようになっています。

 年齢を重ねると、一番の関心事は「自分の健康」ですよね。健康で長生きするためにはどうしたら良いかということに多くの人が注目しています。

私たちの運動教室もそうですが、自治体が高齢者向けに開いているイベントの参加者もかなり増えているみたいです。一方で、健康に関心がない人をどのように動機づけるかということが課題でもあります。健康意識が高い人は、自主的に万歩計をつけて歩いたり、スポーツクラブに通ったりして出かける機会も多いですが、家に閉じ籠もってしまい出歩かず、どんどん不健康になってしまう高齢者もたくさんいます。そういう人たちにどのようにアプローチしたら良いのかよく考えますが、個人だけの問題ではなく、ご近所や地域のつながりも大きく関係していると感じています。

 家の外にも自分の居場所があって、周りがやっているから自分も体を動かしてみようという気持ちになれたら良いですよね。また、「一緒に運動すると、なんだか仲良くなれる」というような人を結びつける力もあると思うので、その輪がどんどん広がっていけば、健康だけでなく、地域のいろいろな問題の解消にもつながるのではないかと考えています。高齢者が気軽に立ち寄れて、血圧計や体組成計、運動できるスペースもある「健康ステーション」のような場所が増えることが理想ですが、そうでなくても、趣味のサークルやコミュニティーがもっとたくさんできて、多くの人が参加するようになったらいいな、と思います。

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――ご自身の研究で、今後どのようなことを目指していますか。

林 やはりスポーツというものを健康につなげていく研究を続けていきたいです。國學院大學に在籍しているさまざまな分野の専門家と協力して、スポーツだけでなく、休息、栄養、ストレスといった身体と心、トータルでのヘルスケアをやりたいですね。最近では、運動により筋肉から出る物質が疾病の予防や抑制につながるという研究も進んでいて、その中の一部は私が今、研究している動脈硬化にも有効だと分かっていますし、研究したいことはたくさんあります。でも、あれもこれも、というのはできないので、運動に軸足を置いて健康に携わるという姿勢を忘れずにいたいと思っています。

 疾病予防のための運動を指導する「健康運動指導士」という職業があるのをご存じですか。しっかりとした知識をもち、試験を受けて資格を得た人が病院や介護施設、スポーツクラブで活躍していますが、まだまだ世の中には知られていません。こういう仕事がもっと認知されて社会的に認められれば、例えば医師や看護師などとチームで健康をサポートする仕組みも生まれ、健康で長生きできる人ももっと増えるはずです。健康体育学科からもこの仕事に就く人はいるので、これからの活躍が楽しみです。

 教員という立場では、同じ運動でも、「体育」だけでなく「健康」という視点でも人の人生、幸せにつながるのだと、学生たちにその意義を理解してもらえるように、今後も努めていきたいです。※学報平成30年6月号「人間開発学部創設10年」関連企画

 

 

 

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