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見取り方次第で子どもは伸びる

ベテラン教員の「神業」を「見える化」 

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人間開発学部准教授 寺本 貴啓

2018年6月15日更新

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 子どもの学力をいかに伸ばすか-。「できない子」をどうしたらできるようにさせられるか-。ベテラン教員が自らの経験値を基に行う「神業」ともいえる高い指導力を「見える化」しようと研究しているのが、人間開発学部初等教育学科の寺本貴啓(たかひろ)准教授(理科教育、学習科学、教育方法学)だ。小学校教員の養成に主眼を置く同学科で学生たちを指導する寺本准教授は、小学校教員の採用枠が激減するとみられる近い将来を見据え、「『人づくり』の能力にたけた人材の輩出が最重要課題だ」と語る。

 

「できない子」に焦点当てる

 

――寺本准教授が取り組んでいる研究について教えてください。

寺本准教授(以下、寺本) 一言で表現するなら、子どもの「見取り方」です。見取りとは、子ども一人一人の学力状況を的確に見て、判断して、それに対応すること。私は、このサイクルを研究しています。ベテラン教員の中にはこの一連の流れを長年の経験を基にうまく行ってしまう人もいますが、経験不足の若手教員は、どうしたら良いか分からないものです。そこで、ベテラン教員のいわゆる「神業」を「見える化」するのが私の研究です。「見取り方」にはセンスや判断力も影響しますし、目的によって指導のポイントも変わります。具体的な事象やデータを蓄積し、ある一定のハウツーを示すことで「見える化」しようとしています。

――「見取り方」で重要なことは何でしょうか。

寺本 教員が担う指導の本来の目的は、成績をつけることではありません。子どもに理解を深めさせ、できないことをできるようにさせることです。極論に聞こえるかもしれませんが、授業最後のテストを課す段階では教員には子ども全員が100点満点を取れるようにしておく必要が本来はあります。しかし、現状は見取って指導していくという実践がまだまだ足りていないと思います。スモールステップであっても、学習過程の中で正しいアプローチさえすれば、子どもの成績はもっと伸びるはずです。

 私の研究では、どちらかというと「できない子」に焦点を当てています。教育書の大半は、決められた時間内で授業を展開するための手引きであり、イレギュラーな子どもへの対処方法はほとんど触れられていません。個別に対応しなければならない子どもの学力をどうしたら引き上げられるかについて考えるのが、私の研究スタンスだと思っています。

――学部教育の中に研究の内容や成果をどのように反映しているのでしょうか。

寺本 担当科目の一つに、小学校理科の授業での心構えや技能を習得させる「初等科教育法(理科)」があります。学生は小学校で教わった基礎的なことを結構、忘れています。そこで、小学生に教えるのと同様の授業をして、指導のモデルを示すようにしています。例えば、話す内容を小学生にも分かる簡単な言葉に置き換えることです。分からない人の立場になれば、どれほど丁寧に説明することが大切かを身をもって知ることができますからね。また、「できなくて当たり前」という雰囲気をつくるようにしています。具体的には、「できない学生」を指名して質問していきます。小学校の授業でよくあるのは、「できる子」をあてるというパターンです。これだと確かに授業は効率的に進められます。しかし、自分の言葉で説明できない子どもも、他の子どもの説明を少しずつ聞いていくことで、最後には考えが整理でき、洗練された説明ができるようになっていくものです。「できない子」をできるようにさせるためには、とても大切な手法です。そのことを学生に体感させたいと考えながら授業を行っています。

 

〝王道〟の理科教育を学生に

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――人間開発学部の次の10年を見据え、ご自身の研究、そして初等教育学科の目指す将来像について、お聞かせください。

寺本 教育系の大学教員は、これからの教育のあり方や考え方を提案していくことも大切ですが、日ごろの学生の授業では文部科学省の方針を咀嚼(そしゃく)して、どれだけ分かりやすく伝えるかが仕事です。個人的な役割としては、今後の理科教育のあり方を提言すると同時に、理科教育に関する新しい学習指導要領の内容や正しい指導方法について、全国の教員にしっかりとした情報を提供していくことだと考えています。併せて、少子化により小学校教員の採用枠は10年後には激減し、厳しい時代になっているでしょうから。「子どもの能力を伸ばすテクニック」に秀でた人材を育てることが、これまで以上に最重要課題となります。そのためには、〝王道〟の理科教育を学生にきちんと伝えていくことも大切な役割であると肝に銘じていきたいです。

学報平成30年6月号「人間開発学部創設10年」関連企画

寺本 貴啓

このページに対するお問い合せ先: 広報課

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