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夢中になって遊ぶ中で培われる力

楽しいから遊ぶ、遊びたいから遊ぶ

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人間開発学部 教授 神長美津子

2018年2月27日更新

 幼児期の教育では、子どもたちが夢中になって遊び、その中でさまざまなことを体験し学んでいくことを「遊びの中での学び」として大切にしています。しかし、一般の方には「幼児は遊んでいる中で、いろいろ学んでいます」と言っても、なかなか理解してもらえません。私が幼稚園教諭だった頃の話ですが、卒園していく保護者から、「先生、一緒に遊んでくれてありがとうございます。これからしっかり勉強させますから」とお礼を言ってくださる保護者に何と答えてよいのか、言葉に詰まることがありました。お礼を言ってくださる気持ちはありがたいのですが、幼稚園教諭の立場からすると「遊ぶことと、勉強することは対極ではないのに」という思いがあり、もどかしさを感じたことを記憶しています。

 幼児は、夢中になって遊ぶ中で、いろいろな思いを巡らし、試したり確かめたりして探究し、物の特性や物事の法則性に気付いたり、それを先生や友達に話しながら言葉で伝える力をつけたり、友達の気持ちに気付いたりしています。つまり、想像力や思考力、表現力、人間関係調整力等々、さまざまな力が培われています。

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 幼児自身は、遊ぶ中で何を学んでいるかは意識していません。楽しいから遊ぶ、遊びたいから遊んでいます。夢中になって遊んだ結果、さまざまな体験をして学び、成長に欠かせない経験をしているのです。幼児は遊びの中で、自覚していないという意味では「無自覚的な学び」ですが、そこで体験し身に付けた力は、小学校以降の学習課題を意識した「自覚的な学び」につながっていくのです。幼児にとって、遊びは学習なのです。

 近年、幼稚園や保育園と、小学校との連携が進み、各学校や園で、幼児期の遊びの中で培われている力を小学校の生活や学習に活かし、小学校教育との円滑なカリキュラムの接続を図る取組みが展開されています。つまり、幼児期の教育から小学校教育に移行する5歳児から1年生の時期を連続したものとして捉え、「主体的に遊ぶ姿」から「主体的に学ぶ姿」に次第に移行し「自覚的な学び」に向かう時期を共有する考え方です。

 夢中になって遊んだからこそ、ものや人との関わりが豊かになり、そうした直接的・具体的体験が、小学校以降に始まる学習を面白いものにするのです。夢中になって遊ぶ中で、どんな力が培われていくかを温かなまなざしで見守りながら、幼児期の子どもたちの学習者としての成長を支えていきたいものです。

 

 

 

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